腸が持っている「神の手」という重要な役割

不要な物や毒素を排泄する「神の手」といわれる大切な役割

腸の広さはテニスコート1面分

腸は、小腸と大腸の2つからなります。さらに、小腸は、十二指腸・空腸・回腸に、大腸は、盲腸・結腸・直腸に分類されています。

小腸と大腸の間には、回盲弁があり、食物が逆流するのを防いでいます。腸の長さは、全長7~9メートル程です。腸の広さは、テニスコート1面分400平方メートルあるといわれています。

ちなみに、人の体の表面積は、男性が1.8平方メートル、女性が1.6平方メートルですから、腸は体の表面の200倍以上の広さがあるのです。

これは栄養の消化と吸収を果たす場所を広く確保するためです。

まず、小腸の表面は、ひだのようになっています。そのひだに絨毛という突起がびっしり生えていて、さらに、絨毛の表面には微絨毛という細かいひだになっています。それによって、表面積は200倍にまで広くなっているのです。

腸粘膜が汚れていたり傷ついていたら、病気やアレルギーの原因になる

腸には、体にとって必要な栄養素を吸収するだけでなく、不要な物や毒素を排泄する「神の手」といわれる大切な役割があります。

その重要な働きを担っているのが、微絨毛をはじめとした腸粘膜です。この腸粘膜が健全な状態であってこそ、正常な働きが行なわれます。しかし、現代社会では抗菌性物質などの添加物や食生活の乱れやストレスなどによって、多くの人の腸粘膜が荒れてしまっている傾向にあります。

腸粘膜が弱っていて、「神の手」の選別する能力が低下することによって、必要なビタミンやミネラルの吸収不足や、反対にアレルギーの原因となるアレルゲンの吸収などが起こると考えられています。健康を保つためには、体の中にあるテニスコート上面分の広さの腸をキレイに整えることが大切なのです。

腸粘膜には、善玉菌が棲みついていて、腸粘膜が弱るのを防いでくれでいますので、ここでも、善玉菌の活躍が期待されています。

腸はビタミン、ホルモン、酵素をつくる

ピタミンは食へ物よりも、腸内細菌による合成のほうが重要

腸内細菌が、重要な物質を作ってる!

人が自分では作ることのできないビタミンやホルモンや酵素などを腸内細菌が合成しているのではないかと数十年前から考えられていましたが、最近の研究で少しずつ証明されてきています。

それはメタゲノム解析という研究手法で、腸内細菌の性質をひとつつひとつ調べるのではなく、ひとまとめにして、遺伝子レベルで解析する方法です。

たとえば、ビタミンB12 を作り出す遺伝子があると、いずれかの腸内細菌が作り出しているだろうということがわかるのです。

これまで、人が合成できないビタミンなどは、食べ物で補給することばかりに気をとられてきましたが、今後は、どのようにしで、腸内で作り出していくかが問題です。

ホルモン・酵素も腸がカギを握っている

東北大学の研究によると、腸内細菌によるビタミンB群の合成は、腸内細菌が活性化すると大幅に増強されるそうです。つまり、ビタミンは食べ物から嘩るよりも、腸内細菌によるビタミン合成のほうが重要だということです。

腸内細菌は、葉酸・ナイアシン・ビタミンB6・ビタミンB12・ビタミンCなどを合成しています。さらに脳内の幸せ物質と呼ばれるセロトニンやドーパミンは、タンパク質の分解産物であるトリプトファンとフェニルアラニンによって腸内で合成されています。

その合成には、腸内細菌が合成するビタミンが必要不可欠です。そして、腸では腸内細菌によって約3000種類の酵素が合成されているといわれていて、これは約500種類の酵素を合成する肝臓を上回るものです。

ビタミン・ホルモン・酵素いずれも、健康を保つうえで、欠かせないものですが、義妄に増やすことはできません。日頃から、その土台となる腸内細菌がしっかり活躍できる腸内環境を整えることが大切です。
ビタミンの効能、効果はこちら。

私たちの体はおでんに例えると「ちくわ」

生物はどのように栄養を吸収するかによって形を変えた

生命力は、大自然との交流から生まれる

地球上に初めて誕生した生命は、たった1つの細胞からなる微生物でした。それから37億年を経で、人は60兆個の細胞を持つようになりました。

微生物も人も、イキイキと活動するために共通することがあります。それは大自然にあるエネルギー(栄養素や酸素など) をその体に取り入れることです。

たとえば、細菌も外から栄養素を入れないと生きていけません。人も、飲まず食わずだと死んでしまいます。また、取り入れるだけでなく、不要なものを排泄することも重要です。食べてばかりで、ウンチが出ないと糞詰まりになっでしまいます。生命とは、外にあるエネルギーを内なる体へと入れて出すエネルギーの流れそのものともいえます。ですからその流れが、スムーズか停滞しているかで、生命力が左右されます。

毎日、何気なく行なっている、食事やウンチや呼吸こそが、生命そのものともいえます。食べない!出せない! 吸えない! 吐けない!では死んでしまいます。

腸は、そのエネルギーを出し入れする重要な場所なのです。健康のために、体にいい食材やサプリメントが大人気です。しかし、どんなにいいものを食べても、腸の消化吸収機能が働かないと、内なる身体に入ってきません。

また、腸の排泄機能が衰えていると、どんなにいいものを食べても、老廃物が治まり、エネルギーの流れが滞り、生命力が低下してしまいます。本当の健康を手に入れるためには、腸の働きを整えることが第一歩です。これこそが生命をイキイキと輝かせる基本なのです。

人の体は、チューブと同じ?

生物はどのようにして栄養を吸収するかによっで、その形を変えてきました。37億年前に、海で生まれた生物は、体の表面(細胞膜)から、ミネラルなどを吸収するメタン細菌などの単細胞の微生物で、たまご型をしていました。

その後、微生物が進化して、海水ミネラルより栄養価の高い他の生物を捕食して消化する多細胞生物が約5億年前に誕生。ヒドラ(腔腸動物)などは、捕食したエサを消化する場所をつくりだしました。

これが腸の始まりです。ヒドラの腸は、お椀型をしていて、エサを取り入れる入口と残さ瘡を排泄する出口が同じで、きんちゃくに近いです。

さらに進化して、ヤツメウナギなどの無顎類になると、エサの入口と残連の出口が別々になり、一直線の腸ができます。その姿はチクワにそっくりです。

そして、サメなどの軟骨魚類になると、大きな獲物を飲み込めるようになり、腸の全部がふくらみ、食物が一時保管する貯蔵庫として胃ができました。さらに、動物が海から陸へとあがると、糞を溜めて排泄する必要が生じ、大腸が発達しました。このようにして、私たち人の体は、上から、口・食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・直腸・肛門までの、ひとつながりの腸をもつようになったのです。

健康観は正しいでしょうか?

医学の常識が正しいとは限らない

医学界の常識は、世間の…

こちらの通り、寄生虫とアレルギーの関係はすでに科学的にも証明されました。

医学界の常識はいつのまにか180度ひっくり返ってしまうことがあるのです。医学界の常識のおかしさは、さまざまな健康観に反映されでいます。

たとえば、最近「メタポリック症候群」という言葉をよく耳にするようになりました。少し太りだすと「メタボだ」と言われてダイエットを要請されたりするのですが、そんな現状を、私はちょっとおかしいなと思ってみています。

欧米と違い、日本には治療が必要なほど太っている人は、あまりいないと思うからです。そもそも、肥満の基準自体を疑ってみる必要があります。

日本肥満学会で定めたウェストサイズの「正常値」は、男性の場合管85センチ以下、女性の場合は90センチ以下です。つまり、これを超えるとメタポリックシンドローム(代謝症候群)だといわれてしまうわけです。

しかし、国際糖尿病連合の基準値は、男性の場合90センチ、女性の場合は80センチです。アメリカの基準値は男性の場合103センチ、女性の場合は89センチ。中国では男性90セチ、女性80センチです。

世界の基準と比べてみると、いかに日本の基準が厳しいものかがわかります。男性の場合は特に、日本の基準値を数センチ超えていたからといって、生活習慣病にかかるリスクが特別高い状態だとはいえないのです。

体重を身長の2乗で割って算出する肥満数値 BMIも同様で、日本肥満学会はBM I25以上を肥満とし、厚生労働省は22~23を望ましいものとしています。しかし、BM Iが22~23 の人が特別に長生きするという裏づけはどこにもありません。

反対に、国立がん研究センターのによる調査では、BMIがおよそ23~27の人が長生きで、それより太っていてもやせていても死亡率は上がっていく、という結果が出ました。

アメリカでも同様の調査が行なわれ、その結果はBMIが25~29.9の人が一番寿命が長かったのです。BMIが25~29.9の人は肥満とされる数値です。

おかしなコレステロールの数値

コレステロールの基準値も眉唾モノです。日本では稔コレステロールの正常値は120~220mg/dl 、つまり上限値は220mg/dlされています。

しかし、他国の基準値をみてみると、上限値は260~270mg/dl ほどです。20011年に、日本動脈硬化学会は総コレステロールの上限値を220~240mg/dlに引き上げました。

一気に20mg/dlも引き上げられたということが、基準値はあてにならないものだといっているように思えてなりません。

コレステロール値と死亡率の相関関係について調査した、報告も目を惹きます。女性の場合は総コレステロール値が159mg/dl以下では死亡率に差があり、それ以上の値では差はあまりなかったのです。

男性の場合は279mg/dlまでは総コレステロール値が高くなればなるほど死亡率は下がっていました。つまり、男性の場合、日本の基準値である220mg/dlを超えでも、280mg/dlくらいまでなら、特に気にしなくてもいいということです。

もちろん総コレステロール値が高過ぎるのはよくありませんが、低過ぎるのも健康的とはいえません。コレステロールは悪者で数値が低ければ低いほどいいと思っている人も多いようですが、それは間違いです。

総コレステロール値が低いと、性ホルモンの分泌量が減少します。性ホルモンの量が減ると、身体機能が低下し、ガンやうつ病などさまざまな病気にかかりやすくなります。
安定したコレステロール値のために積極的に摂りたい5つの栄養素

ご自身の健康を考える際には、その基準が正しいものなのかどうかを考え直してみる必要があるかもしれません。

まだまだ誤解が多い菌や寄生虫について

寄生虫には人間が病気にならないように見張ってくれる存在でも。

寄生虫で免疫が高まる

「寄生虫」と言っただけで、多くの人がいやな顔をしますが、そこには誤解がります。人間を宿主とする寄生虫なら、少しくらいおなかに寄生していても問題はありません。

人間に宿る寄生虫は、人間の体に悪さをするどころか、大事にしてくれるからです。これは考えてみれば意外でもなんでもない話で、寄生虫は寄生した人間が死んでしまうと、一緒に死んでしまいます。

寄生虫にとっで人間が病気になって食欲が落ちることは、自らの死活問題です。つまり、自分が元気で長生きするためには、寄生している人間にも元気で長生きしてもらうことが、どうしでも必要だというわけです。

言い換えると、人間を宿主にしている寄生虫は人間が病気にならないように見張ってくれる存在なのです。ですから、寄生虫は宿主の人間の免疫細胞を刺激し、人間が病気にならないようにしてくれるのです。

かつて、検査で判明したのは、私のおなかの中には、「日本海裂頭条虫」というサナダムシが15年ほどいましたが、このことが原因で体に不調を覚えたことはありませんでした。こうしたサナダムシをおなかの中で「飼っていた」おかげで、元気に暮らせているのだと思っていました。

危ない寄生虫やウィルスもいる

ただ、注意してほしいのは、すべての寄生虫が人間とうまくやっていけるのではないということです。人間にとって安全なのは、付き合いの長い、人のなかで子どもを産める、人間を宿主にしている寄生虫だけです。

昔から人間に寄生してきた歴史のある虫以外は、人問に悪さをする危険性があります。たとえば、キタキツネに寄生する「エキノコックス」というサナダムシは、宿主のキタキツネは大切にするものの、人間のことは大切にしてくれません。

エキノコックスが人間の肝臓や肺、心臓に寄生してしまうと、最悪の場合、命を落とすこともあります。ウィルスも寄生虫同様、長く付き合いのある宿主以外を攻撃する性質があります。

一時期、脅威をふりまいたSARS ウィルスはハクビシンの命は奪いませんが、人間の命は保障してくれません。鳥インフルエンザも、カモには悪さをしませんが、トリの命は奪ってしまいます。

エボラ出血熱ウィルスも、ミドリザルには何の悪さもしないのです。人間は、このような危険なウィルスなどと闘う一方、いろいろな菌や寄生虫と共生して生きてきました。

つまり、共生したほうがよい菌や寄生虫もいれば、排除しなければならない菌や寄生虫もいるというわけです。一律に「寄生虫は悪者で、菌は汚いものだ」という発想は独善的なだけではなく、役立つ寄生虫、役立つ菌までを排除してします、人間のためにもならない考え方だったのです。

こんなにキレイ好き社会なのにアトピーが増えるのは

アレルギーが増えてしまった

私は長年、寄生虫とアレルギーとの関連について研究しています。そのなかで、人間に寄生した寄生虫は、人間の体内でアレルギー反応と関係があるIgE抗体を大量につくり出すことがわかったのです。

寄生虫が出す分泌・排泄液の中に、タンパク質としては比較的小さな、分子量2万のタンパク質があっで、それが花粉やハウスダストなどのアレルゲンと反応しないIgE抗体を多量に産生していることが確認されていまう。

この寄生虫の分子量2万のタンパク質が産生した多量のIgE抗体がアトピー性皮膚炎や花粉症などといったアレルギー疾患の発症を抑えていたのです。これは、ハンブルグ大学による次のような調査によって裏付けされています。旧西ドイツと旧東ドイツとでは、人種的には同一であるはずなのに、アレルギー疾患の患者さんが旧西ドイツのほうにより多くいました。

そこで、旧西ドイツと旧東ドイツの子どもたちの血中のIgE抗体の値を調べたところ、旧東ドイツの子どもたちのほうが高いという結果が出ました。

そこから、「旧西ドイツの生活水準が上がって寄生虫が減り、IgE抗体の値が下がったことがアレルギー疾患の増加を招いた」という結論が導かれました。ちなみに、日本でも同様の調査結果が出ています。日本初の花粉症患者が現れたのは、1963年です。1960年に10%を切った寄生虫感染率が、1965年には5%を切るまでに下がっていく最中の出来事だったのです。
つまり、日本に寄生虫が減ったことが、花粉症が出現した理由の1つだということができるのです。

皮膚の常在菌が守って< れている

寄生虫の減少以外にも、現代にアレルギー疾患が増えている原因はあります。それは、日本人がきれい好きすぎることです。

現代の私たち日本人は「抗菌」グッズが大好きですが、抗菌であることは必ずしもいいことでありません。抗菌素材が使用されたグッズを使いすぎることで、本来必要な菌までも私たちのまわりからいなくなってしまいました。

あらゆる菌を生活から追い出したことで免疫力が下がり、アレルギー疾患が増えてしまったのです。たとえば、皮膚の常在菌は、除菌仕様の石けんなどを使うと殺されてしまいます。そもそも人間の皮膚には、ブドウ球菌、アクネ菌などの常在菌が存在しでいます。

この菌たちは皮膚の表面にある脂肪を食べて分解し、弱酸性にしてくれるので、これにより私たちの皮膚は守られているのです。

これを石けんなどで洗い流してしまうと、約90%の常在菌が失われ、若い人でも元の状態に戻るのに12時間を要するのです。歳をとってくると20時間かかる人もいます。

そして、常在菌がなくなった肌は角質がはがれたもろい状態になるので、アレルギー物質が入りやすく、アトピー性皮膚炎を起こしやすくなります。農薬や防腐剤、化学調味料や食品添加物を多く摂取すると、除菌石けんで皮膚の常在菌が殺されてしまうように、腸内細菌は数を減らしてしまいます。その結果、免疫力が下がり、アレルギー疾患を起こしやすくなってしまうのです。
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コレラ菌が体内に入っても下痢をしなかった

自分の体で、人体実験

腸内環境の重要性を実感していただくために、ここで少し私のエピソードを紹介しましょう。これは私が行なった「人体実験」の話です。

その昔、私はアメリカで実験のためにコレラ菌を飲んだことがあります。まさに自分自身の体を使って人体実験をしたわけですが、私は直感的に「腸内環境さえよければ、コレラ菌を飲んでも体に影響は出ない」と感じていたのです。私の直感は正しく、おなかの調子はまったく悪くなりませんでした。

腸内細菌の大切さを自分の体で証明したわけですが、続いで私は「抗生物質を飲んでから、コレラ菌を飲んだらどうなるのだろう? 」と考えました。

思いついたらやらずにおれない性分で、抗生物質を飲んで腸内細菌を弱らせたあとにコレラ菌を飲んでみました。われながらスゴイ実験をしたものとあとになって自ら感心したのですが、その結果、これまた私の直感どおり、ひどい下痢になってしまいました。

私はこうしてコレラ菌が悪さをするかどうかは、ひとえに腸内環境によるということを身をもって体感したのです。たくさんの菌がいる場所では、1つの菌が思うままに悪さをすることはできません。それぞれの菌が増えたいと行動するのですから、1つの菌だけが増殖するのは到底許されないというわけです。

インドネシアでの逆転現象

これは人間の腸内環境だけに限った話ではありません。それを目の当たりにしたのは、インドネシアのカリマンタン島に行ったときでした。

当時、インドネシアに滞在していたのですが、住んでいたのはカギもついていない、川べりの民家でした。なぜ川べりだったかというと、もっとも便利な交通手段が船だったからです。

ここではトイレは川の上にあり、落としたウンコを魚が競い合って食べるのですが、このウンコがプカプカ浮かんでいる川のなかで、女の人が洗濯をしたり、子どもが泳いで遊んでいたりするのです。そんな汚い川で遊んでいたら病気になってしまうだろうと心配したのですが、何度となくそこを訪れても、子どもたちはとても元気でした。

それは、子どもたちが特異体質だからではありません。川にたくさんの菌がいたからです。たとえ病原菌がいたとしても、ほかの菌が数えきれないほどいるのですから、悪さをすることはできないのです。

汚く見える川は、実は安全な遊び場だったというわけです。反対にジャカルタ市街に敷かれている水道管は原水に塩素を大量に入れて菌を殺しています。すると、どこかから忍び込んだ病原菌にとっては増殖しやすい環境になっていて、爆発的に病原菌が増殖しでしまうことがあります。インドネシアでは市街地の水道水よりも川の水のほうが危険性が低いという逆転現象が起こっているのです。

出過ぎも出なさすぎも原因は一緒

下痢と便秘が起こる原因は同じ

排便の状態は莫逆でも、下痢と便秘はどちらも同じ理由で起こることがあります。下痢と便秘を交互に繰り返す人がいるのは不思議なことではなく、当たり前に起こりうることなのです。

下痢と便秘は、腸内細菌のバランスの乱れ、もしくは精神的なストレスが引き起こしているのです。ストレスを感じると、腸内環境はどんどん悪化していきます。善玉菌が減少し、悪玉菌が増えてしまうのです。
ストレスは、自律神経にも悪い影響を与えます。
交感神経の緊張が高まると、それに伴い全身の緊張も高まります。その結果、リラックスすることができなくなり、体のあちこちに不調が起こります。

腸が適当なバランスを失った状態で、さらに交感神経が高ぶってしまうと、便秘か下痢になってしまいます。どちらになるかは人によって違うのですが、いずれにせよ、自然な排便ができなくなってしまうのです。傾向として、男性は痢になりやすく、女性は便秘になりやすいようです。

各駅停車症候群

下痢型の過敏性腸症候群の患者さんの多くは、男性です。過敏性腸症候群は、常にトイレに駆け込みたくなる不安に苛まれるため、通勤に急行電車や快速電車を使うことができないことから、別名「各駅停車症候群」と呼ばれています。

不安感・不快感が強い、現代病の1つだといわれています。女性に多い便秘は、美容に悪影響を及ぼします。便秘になると、肌が荒れ、化粧ののりが悪くなります。体がむくみがちになり、腹部が張っで気分がすぐれなくなります。

便秘も下痢も原因は同じですから、解決法も基本的には同じものです。下痢と便秘を解消するには、一番の要因であるストレスを軽減することがなによりの方法です。激務によるストレスに毎日さらされている人は、休みをとって家で休養をとったり、旅行に出かけたりしてみましょう。

不規則な生活を続けている人は、生活のリズムを見直すことです。早寝早起きを心がけ、バランスのいい食事を規則正しく摂るようにしてみましょう。そうした心がけで腸内環境は少しずつ改善し、下痢や便秘もよくなっていくはずです。

便秘に下剤は危険

ストレスを軽減させるというのは、下痢と便秘に共通する解消法ですが、それぞれに気をつけるべきポイントがあります。まず下痢ですが、下痢止めの薬は飲まないほうがよいでしょう。しかし、いま病院で処方される下痢の症状への薬は、腸内細菌を固めたようなもので、腸内環境を正常化するのに役立ちます。

市販薬なら「ビオフェルミン」が似た効能を期待できますし、腸内の善玉菌を増やすには、後述する「乳酸菌生成エキス」がおすすめです。便秘にも下痢と同じような腸内細菌叢を正常化する薬や「乳酸菌生成エキス」が有効なのです。習慣的に下剤を飲むようになるのは、非常に危険です。

下剤は便だけではなく、腸内のあらゆるものを強制的に流し出してしまいます。必要な腸内細菌が排出されてしまった結果、免疫力が落ち、病気にかかりやすくなってしまうのです。

下痢の場合は薬に頼るのではなく、水の飲み方や食生活に重点を置いた改善法がベストでしょう。それでは次にそれぞれの場合の食事の注意点をまとめてみたいと思います。

下痢の場合

やわらかく、消化がいいものを選んで摂ってください。おかゆや柔らかめのご飯、魚なら自身、肉なら鶏ささみがおすすめです。野菜ならゴボウなど固い繊維質のものは避け、繊維の柔らかいバナナやレタスなどを選んでください。油分を多く含む食品は、消化が悪いので摂らないようにしましょう。

便秘の場合

食物繊維が多く含まれたものを選んで食べるといいでしょう。食物繊維は便のかさを増やし、便通をよくしてくれます。野菜のなかでも根菜類、納豆をはじめとする豆類もおすすめです。熱過ぎるもの・冷た過ぎるものは、どちらも消化器官に負担をかけるので、便秘でも下痢でも摂らないようにしでください。

腸内細菌の数は排便の大きさでわかる

腸内細菌が元気だと排便量もたくさん

ここまで腸内細菌がどれほど大切な働きをしているかをご理解いただけたと思います。ところで、その腸内細菌の量や、腸内環境の良し悪しを知るための大きな指標となるのが日々の排泄物です。

便は、摂取した食物の残骸だけでできているのではありません。もちろん、食物のカスも排出されますが、便のだいたい半分は腸内細菌です。死んでいる腸内細菌はもちろん排出されますが、生きたものも毎回、必ず排出されています。

生きた細菌も含めてある程度の数が排出され続けながら、腸内はちょうどいいバランスを維持しているのです。つまり、便の大きさから、だいたいの腸内細菌の数がわかるというわけなのです。ちなみに、健康な人間の腸内には総量およそ150 グラムの腸内細菌がいます。

便のサイズタウンは由々しき問題

最近は便のサイズが小さい人が増えているのですが、じつはこれは困ったことです。それはすなわち腸内細菌の数が減り、健康な腸を維持できていないという証なのです。

戦前の日本人は、1日約350 グラムほどの便を排出していました。これは欧米人に比べて大きめなのですが、それは昔ながらの日本食が食物繊維の豊富な材料からできているためでした。

食物繊維は腸の働きを助け、腸内環境をよくしてくれるのです。ところが最近の日本人の食生活はすっかり欧米化し、食物繊維摂聖旦はずいぶん減ってしまいました。

逆に、食品添加物がたっぷり入ったファストフードを好んで食べるようになってしまった結果、排便は150 グラムほどになってしまい、女性の場合はなんと100 グラムまで減ってしまいました。それはつまり、腸内環境が悪化していることを示しているのです。腸内環境の改善のためにも、もう1度、和食のよさを見直したいものです。
最近の日本人の腸の傾向とさまざまな症状

腸内細菌叢は気分、人格形成に影響する

現代食と腸内環境

食物アレルギーや肥満、炎症性腸疾患などといった典型的な「現代病」が広がっていますが、こうした症状の原因は、食生活や衛生環境の影響による腸内細菌叢の変化と関連していると考えられます。

アフリカ原住民の子どもと、イタリアで都市生活をしている子どもの腸内細菌叢を比較した研究があります。高食物繊維・低カロリー食で成長したアフリカ原住民の子どもの腸内細菌叢では、日和見菌とされている「バクテロイデーテス門」に属する細菌が優勢だったのに対し、低食物繊維・高カロリー食で育ったイタリアの子どもでは悪玉菌とされている「フィルミクテス門」に属する細菌が優勢でした。

そして、アフリカ原住民の子どもの腸内細菌は、食物繊維から短鎖脂肪酸を合成できる能力の優れた細菌種でした。これらの細菌種によって作り出される短鎖脂肪酸には腸の炎症を抑える作用があり、それがアフリカ人に炎症性腸炎がほとんど見られない原因だと推測されます。

さらにアフリカ原住民の子どもの腸内細菌叢は、イタリア人で都市型生活をしている子どもとくらべて多様な細菌種から構成されていました。こうした多種類で数も多い腸内細菌によって、免疫機能は強化され、ガンにもなりにくく、アレルギー反応も起こらない体になるのです。

腸内細菌は子ともの脳にも影響を与える

研究が進むにつれ、腸内細菌が私たちの気分や感情、人格にまで影響を与えていることが明らかにされてきました。人はそれぞれ気分や人格、思考過程が違うものですが、これもまた腸内細菌の影響なのです。

腸内細菌は脳での遺伝子発現にも影響し、記憶と学習に関係する重要な脳領域の発達を左右していることがわかってきたのです。

脳内の伝達物質である「ドーパミン」や「セロトニン」は腸内細菌によっで合成され、その前駆物質が脳に送られていることを私たちは数年前に報告しました。

それを裏づける研究報告がアイルランドのコーク大学J・F・クリアン博士らによって発表されました。クリアン博士らは、幼少期のマウスが腸内細菌を持たなかった場合、成長彼のセロトニン量がどのように変化するのかを調べたのです。

その結果、腸内細菌を持たないマウスは中枢神経系の多くの部分でセロトニン量が少なくなっていました。とくに雄のマウスではその傾向が顕著にみられました。腸内細菌のない幼少期のマウスに腸内細菌を移入すると脳内のセロトニン量は増えましたが、腸内細菌のない大人のマウスに腸内細菌を移入してもセロトニン量は変わらなかったということです。

こうしたことからも、腸内細菌が脳の発達に重要な役割を果たしていることは明らかでぁり、特に子どもの発達期における腸内環境の改善はとても重要なことだということがわかるのです。