先人の教えは 「 自然順応 」 です。本サイトの 「 自然排泄 」と相通ずるところがあります。
漢方の根底の思想 先人の教えは 「 自然順応 」
先人たちは、「自然尊重・自然順応」を基本としており、自然に倣い作物を育てることで自然と人間の関係を見つめていきます。
いくら肥料や水を与えても適した時期に種をまかなければ芽は出てこないように、自然の摂理を無視することはできません。
これは、土や作物も自然の一員であるからです。
また、自然農法では生産者の「心のあり方」を大切にしています。土や作物に愛情をかければそれに応えて作物が健やかに育っていくことを感じることがあると思います。
古代中国の有名な思想家・老子は 「 人はみな自然 」 といっています。漢方の根底に流れる考え方は、老子に代表される中国古代思想に立脚しています。
老子(ろうし)は、中国春秋時代における哲学者です。諸子百家のうちの道家は彼の思想を基礎とするものであり、また、後に生まれた道教は彼を始祖に置く。「老子」の呼び名は「偉大な人物」を意味する尊称と考えられています。
分類好きの現代の哲学者たちは、こうした思想を「自然哲学」に分類していますからその流儀にしたがえば、漢方の根底の思想は自然哲学です。
天地順応の理
漢方では、人体を 「 小宇宙 」とみなし 「 大宇宙 」 であるところの自然現象に人間は支配される…としました。
この考え方から生まれたのが、天人一体、身土不二の思想です。古書には「天地順応の理」」とか「天地順応の生活様式」といった表現で、人間は、四季の運行に順応して身体の健康状態を保つべきだとしています。
陰陽で診る
また、病気における個々の局部の症状は、小宇宙全体が病んだ結果が部分に現れたのだから、治療に当たっては局部の症状だけを考えるのではなく、小宇宙全体を考えるべきだとしています。
中国の自然哲学は、宇宙全体を支配する原理として、陰陽説をとなえていますから、漢方を見立てるときは、陰陽説を骨子にして診ていきます。
現代にもっとも必要な真実を語る
核のエネルギーを生活や産業に応用し、月に人を送り込んだ人類は、つい最近まで自然は克服できるもの、人知でコントロールできるもの…と強い自信をもって進んできました。
けれども、ここにきて、地球全体が取り返しのきかない環境破壊に直面し、人類の末永い存続が危ぶまれるに至っています。
自然は、人知のコントロールなど及びようもないほど巨大で偉大なものであることが、今、まざまざまと証明されつつあるようです。
してみれば、漢方の根底に流れる自然哲学、天人一体、身上不二、陰陽説は古くからの思想とはいえ、実は現代に最も必要な真実を語っている…といえましょう。
人間はできるだけ自然に順応して生きるのが良く、何か問題があれば自然に治って解決の糸口を見つけよう…こう考えて病気や健康問題に取り組むのが漢方なのです。
漢方治療は防御的
治療の進め方について、東西両医学を比べてみると西洋医学がとても攻撃的であるのに対して、漢方は、防御的であるといえます。
東洋の古人は、自然に逆らうことは無駄であり、むしろ順応しつつ利用する方が良いと考えたからです。
- 人体に備わっている自然治癒力を徹底的に利用する
- 病が病を呼ぶいわば悪循環も自然ならば改善を呼ぶ良環境も自然。漢方はこの2つの自然の循環を良循環に一本化していく
- 身体内部を色々な要素がバランス良く保たれるのも自然なら、バランスが崩れるのも自然。漢方はバランスを保つように作用する
自然治癒力
「病アリテ治セズンバ常ニ中医ヲ得」この一文は、「治療の下手な医者にかかって病気が治らないよりは自然に治るのを待った方が、むしろ好結果を得られることが多いので自然に逆らって無駄な抵抗をしないように」といさめています。
自然治癒力は、体質や素質によって強弱の差が多少ありますが、とにかく「病気に対する抵抗力」の存在を先人達は本能的に知っていたのです。したがって漢方の治療は薬で治すという人為の面と「自然で治す」という面との二面から捉えることが出来ます。
治病転機が起きる
漢方薬を服用していくうちに、体内では治病転機が起こります。その証拠として発汗、嘔吐、下痢、利尿が起こって見方によっては、症状が悪化したように見えるのですが、こうした症状を機に身体が軽くなったり眠りが深くなったりしてやがて快方に向かいます。
身体のバランスを調整する
体内のいろんな機能がバランス良く保たれていることを、漢方では「気血調和」「陰陽調和」と呼んできます。このことを現代医学では、「内部環境の恒常性維持機構(ホメオスターシス)と呼んでいます。
漢方ではこの恒常性を失った状態を病気とみなして、独自の治療法で均衡状態にもっていこうとします。