アレルギーは、60年代頃から急増

花粉症は突然に始まったアレルギー症状

時期になると、TV CMでは花粉症の薬を徹底的にPRします。それだけスギ花粉に困っている人が多いということです。
日本で初めてスギ花粉症の症例が認められたのは、今から約50年以上前の1963年頃です東京医科歯科大学の斉藤博士が発見しました。

症状を訴えたのは栃木県日光市に住む成年男性でした。原因はもちろんスギ花粉ですが、日光のスギ並木は花粉症が発生したその年に植えられたものではありません。17世紀前半に、全長37km、約2万4千本のスギが植えられました。

つまり、スギ花粉は昔から飛んでいたのです。しかし、昔の人はそのスギ花粉を吸っても、スギ花粉症にはならなかったのです。

ということは、昔の人にはスギ花粉を異物として排除する機能が、体内に備わっていたのだと推測できます。

スギ花粉症は第一号患者が出た,63年から毎年のように増加しました。60年代半ばといえぼ、ちょうど結核や寄生虫の感染者が減り、清潔志向が高まっていく頃です。

それと同時にその他の花粉症やアトピー、ぜんそくなどのアレルギー性疾患も猛威を振るい始めました。

ドイツでは西と東でアレルギーの発症の仕方が異なる

アレルギーが急増したのは、日本人だけではありません。ドイツ人、正確に言えば旧西ドイツ人も同様です。しかし、同じドイツ国民でも旧東ドイツ人の間ではアレルギーがまったく増えていません。

ドイツのすべての医科大学でアレルギーの患者さんたちを調査すると、旧西ドイツ人のほうが旧東ドイツ人よリ3~4倍も多かったのです。たとえば、9~11歳の子どもたち7800名を対象とする花粉症の調査では、旧西ドイツ児童の8.6 % 、旧東ドイツ児童の2.6% に花粉症が認められました。約3.3倍の人数に当たります。

ベルリンの壁によって東西のドイツがわかれていた頃、旧西ドイツでは、工業の発達と共に、大気汚染などの公害への対策や住環境、食品添加物や農薬などに対する法的基準の整備も行われていました。

そして、清潔志向が人々の間に浸透し、免疫力を高めてくれている細菌類を一方的に追い出した「キレイ社会」になっていたのです。このような「キレイ社会」が免疫力低下を導き、花粉症ばかりでなく、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患を生みだしたのです。

なぜ急速にアレルギーが増えたか?

私たち人間の体は、1万年前とまったく変わっていません。体を構成する細胞は同じだし、体に備わっている免疫システムも同じです。これは、1996年から、医学者や生物学者、遺伝学者、生態学者などが一堂に会して議論を重ねてきた「人類の家畜化現象を考える研究会」で出した結論です。

ではなぜ、1万年前と同じ紳胞を持つ人間に、急にアレルギーが増えてしまったのでしょうか。その大きな原因として、人間が文明の名の下に、より快適でよりキレイな環境をつくってしまったことがあげられます。

l万年前、人類は裸・裸足でジャングルや草原を走り回っていました。自然とともに、体をめいっばい動かして、元気に生きていたのです。しかし、38億年という生物の歴史から見れば「ほんのまばたきをする一瞬」に過ぎない1万年の間に、人類の生活環境は一変しました。

とりわけ、ここ50~60年の変化は凄まじいものがあります。山奥の土地に住まない限り、現代人は極端な話、清潔でキレイな小屋にこもり、ファストフードやコンビニ食などの便利で安い餌で飼い慣らされた「家畜」のようになってしまったのです。

アレルギーの発症だけではなく、生きる力そのものが弱ってきたと言えるかもしれません。しかし、この流れは今後も続くでしょう。人間は文明を発展させることがいいと思っている、珍しい生き物だからです。

問題は、体のはうが急激な変化についていけないことです。自然と切り離されて、身の回りにあったはずの菌を退治した「キレイすぎる社会」に、体はそう簡単に馴染むことができないのです。

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