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アレルギーのない環境

幼い頓に身につけた免疫力

私が子どもの頃に育った環境というと。父親が結核の専門医だった関係で、私は人気のない田舎につくられた国立の結核療養所の敷地にある宿舎で育ちました。

病原菌の巣と目される宿舎から小学校に通っていたので、大変いじめられました。しかし、私はいじめられても死のうなどと思ったことは一度もありませんでした。いじめっ子と戦いながら自然のなかで元気いっぱいに遊んだものです。

いじめに負けない強い心を持つことができたのは、小学校低学年から世話をしていたヤギのおかげかもしれません。毎朝餌をやり、乳を搾り、天気の良い日は小屋から草地に出してやり、本当にかわいがっていました。
私が学校から帰って来ると、姿の見えないうちからヤギのメェメェ鳴く声が聞こえたのです。ヤギのはか、ニワトリを30羽、ウサギを5羽飼っていたこともあって、自分より弱い者がいることを学びました。

そんな経験から、ペットを飼うのは子どもにとって大変良いことだと思います。情緒面の発達から見て、大き皇息味があります。また、遊びといえば、田んぼでドジョウを捕ったり、カエルをつかまえて肛門に麦わらを突っ込み、そこから息を吹き込んでお腹をパンパンに膨らませたり、トンボの尾を切って飛ばしたりしました。

少年時代は、いつも泥んこになって転げ回っている自然児でした。

ぉかげで私は、70歳を過ぎてもなお、いたって健康です。大人が「汚い」と顔をしかめるような環境のなかで自由に遊び、細菌やウィルスにさらされる機会が多かったため、幼いうちに免疫力がついたのだと思います。

お腹の中は回虫がいっぱい

子どもの頃の私のお腹には、回虫がいました。1950年代は、それが当たり前でした。

とくに私は、畑に行ってトマトを丸かじりしたり、収穫後の白菜の根っこを生でむしゃむしゃ食べたりしていましたから、回虫がいつもお腹にいました。回虫はだいたい生野菜から体内に侵入します。当時は肥料が人糞で、発酵させて使っていましたが、なかには少し「ナマの人糞」が残っていることもあったようで、その人糞のなかに、回虫の卵がそれこそうようよといたわけです。回虫は1日に20万個の卵を産みますからすぐに感染してしまいます。

日本人はそのころ生野菜などは食べず、お漬物か煮物、せいぜいおひたしにして食べていました。それが、回虫を無防備に体内に取り込ませない知恵でした。
しかし、畑で生野菜を食べていた私のお腹のなかは「回虫だらけ」になったのです。

戦後になって、各市町村に「寄生虫予防会」が組織され、小中学校を中心に「回虫駆除デー」が設けられました。きっかけは、アメリカ人が日本に進駐したときに、生野菜を食べたら回虫だらけだったことでした。西洋では日本と違って肥料に人糞を使わなかったので、野菜を生のサラダにして食べる習慣があったのです。当時、日本に駐留したアメリカ人は、免疫のないまま一気に大量の寄生虫が体内に入ったため、お腹をこわして、相当苦しんだようです。

日本で人糞を肥料にするようになったのは、徳川家康が四十万人の兵を連れて関東にやって来たときからです。関東の土地は痩せているので、四十万人の食料を確保するのが大変でした。それで、人糞を肥料にして、野菜を育てることにしたことがきっかけです。

だから、江戸時代は便の値段がものすごく高かったのです。長屋の大家さんが長屋の便をすべて管理しており、「家賃はいらないから立派な便をしてくれ!」と言ったとか、言わないとか。おかげで江戸の町は、便や生ゴが肥料としてリサイクルされて、非常に清潔に保たれていました。

その点、19世紀初頭には江戸と同じ100万都市であったフランス・パリでは、便をあくまでも汚物と考え、道に投げ落としていたから大変に汚かったそうで、女性は、2階から落ちてくる便を浴びないようにパラソルをさし、道に落ちた便を踏まないようにハイヒールをはき、どこでも便ができるように落下傘みたいなスカートをはいたと伝えられています。そのおかげで、フランスでは下水道が発達したのです。

日本に駐留したアメリカ人が、日本の生野菜に閉口したので、マッカーサーが直々に吉田首相に「この不潔さを何とかしなさい」と苦言を呈して設けられたのが「回虫駆除デー」だったのです。

私たちは月に1度のこの日を楽しみにしていました。海人草という海藻を大きな鍋でぐつぐつと煮て、その煮汁を飲まされるのですが、これが効いて夕方にはお腹のなかの回虫がお尻から出てきます。その長い虫を引っ張り出すのが、非常に気持ちよかったのです。

当時の子どもたちははぼ全員 が「回虫持ち」でした。回虫と毎月顔を合わせているので、慣れっこでした。

それに、引っ張り出した回虫を洗って、翌日学校に持っていくと、ど褒美がもらえたのです。一番長い回虫を出した人は一等賞で、たくさん出した人は最多賞でした。回虫の駆虫デーの翌朝は、みんなの回虫が教壇に山と積まれました。

スギ花粉は昔のほうが多かった

スギをはじめヒノキ、ブタクサ等さまざまな植物の花粉がアレルゲンとなって、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどを起こす花粉症は、どんどん低年齢化が進んでいます。その背景には、大気汚染による免疫増強因子の増加や、都市化および住環境の変化、スギの植生・花粉飛散量の増加など、さまざまな因子が関与していると言われてきました。

本当にそうなのでしょうか?

大気汚染はフィルター等の技術のない昔のほうがひどく、スギ花粉だって青から飛んでいます。その頃に花粉症になる人はほとんどいなかったのですから、これらの理由は少し説得力に欠けます。

回虫をはじめとする「寄生虫感染率が急減したこと」が大きく影響しているのかもしれません。

昔の子はスギ花粉まみれだったはずです。スギ花粉といって、竹筒でスギの実をパチンと撃つ遊びのために、花粉でまっ黄色になりながらスギの実をたくさん拾い集めたものです。

女の子に「金髪にしてあげるよ」と言って、花粉を髪の毛にいっぱい塗ってあげたこともあります。女の子にモテたい一心で編み出した遊びですが、女の子にも非常に喜ばれました。私たちの時代は、誰も彼もそんなふうにスギ花粉まみれでしたが、子どもたちは誰も花粉症にはなりませんでした。長じて、花粉まみれの「回虫持ち」だった少年時代のこの経験が、「寄生虫がアレルギーを抑える」研究を始めるヒントにもなりました。

ここまで私は回虫やサナダ虫など寄生虫の話ばかりを並べてきましたが、いまは、「アレルギー反応は寄生虫だけではなく、細菌やウィルスなどの微生物が抑制する」ことがわかってきました。

宿主にやさしいのは、寄生虫も細菌・ウィルスも同じです。彼らは1人では生きられないからこそ、宿主の免疫バランスを保つなどの役割を担ってきたように思います。

細菌やウィルスは、必要以上に排除することなく、ふつうに共生していればよい影響を受けることができるのです。ただし、寄生虫や紳菌・ウィルスのなかで人間に悪さをしないのは、大昔から人間とうまく共生しているものだけです。たとえば、キタキツネに寄生するサナダムシであるエキノコックスや、中国発祥のSARSウィルス、鳥インフルエンザウィルスなど、動物に寄生するものには、人間にとって「怖いもの」もいます。その点は誤解してはいけません。大変なことになってしまいます。

自然と共に暮らしてきた日本人

西洋医学は虫を排除することがきっかけで発見

近現代の日本では、虫はとても嫌われる存在になってしまいました。これは西洋医学の影響かもしれません。というのも、西欧では虫を病原因子と捉え、「排除すべき散」として扱ってきたからです。

このことはWHOの記章に象徴されています。棒に巻きつく蛇を措いたこのデザインは、「旧約聖書」の記述に由来し、ギリシャ神話ではアポロンの息子で医術の神であるアスクレビオスが掲げていたとされるものです。

ただし、本当はへどではありません。「旧約聖書」の舞台になっているアラブ地方に多い、メジナムシという寄生虫です。これに感染すると、皮膚病変部に強い痛みと痔みが生じます。農作業も何も手につかなくなるなど、非常につらい症状です。

それで古来、皮膚の丘疹から棒を用いてメジナムシを引き出す、という治療が行われていました。その治療行為が西洋医学のシンボルマークにまでなったようです。

東洋医学の考え方

一方、東洋医学は寄生虫をどう捉えていたのでしょうか。病気や、ときには死をもたらす、体に棲む虫に怯えた点では西洋人と同じです。ただ、「病気もヒトと一体」と考える東洋人は、寄生虫をヒトと切り離して扱うことはしませんでした。

体に棲みつく虫も自分自身の一部だ」と捉えたのです。当然、日本も昔は体内の寄生虫を自分の「分身」とし、その虫たちが病気を引き起こしたり、意識や感情を呼び起こしたりすると考えていました。それが証拠に、日本語には「虫」のつく慣用句がたくさんあります。「虫がいい」「虫が納まらない」「虫が好かない」「虫が付く」「虫の知らせ」「虫の居所が悪い」「虫も殺さぬ」「虫をわずらう」お腹のなかの寄生虫が、日本人を動かしている原動力であると考えていたのでしょう。

こんなふうに虫の存在を認めると、生き方が楽になります。「自分は気づかなかったけど、虫が教えてくれるんだ(虫の知らせ)」「私はあなたを好きだけど、虫が嫌っているんだ(虫が好かない)」「私は納得しているけど、虫が反発するんだ(虫の居所が悪い)」と、「見えない力」を味方につけることができます。「浮気の虫」というのもあります。

日本人の半数以上が虫持ち

日本人は縄文の昔からずっと、「虫持ち」でした。回虫やギョウ虫をはじめとする寄生虫を「飼って」いたのです。

しかし、現在は回虫にかかっている人はほとんどいません。19500年代に60%を超えていた日本人の寄生虫感染率は、30年でほとんどゼロになっているのです。

人間は縄文時代から寄生虫と共生してきたなかで、それなりに彼らとうまくつき合って健康を維持するようになっていたことが考えられるからです。

寄生虫の多くほ人間の体内で栄養を横取りするけれど、宿主である人間の体内の栄養奪うほどの致命的な害はおよぼしません。人間の死は寄生虫自身の死をも意味するからです。

清潔すぎる社会における弊害や落とし穴

洗いすぎは、肌荒れの一番の原因

最近、現代人に多い、皮膚病として脂漏性皮膚炎という病気があります。これは、洗いすぎることによって皮膚の免疫システムが崩れてしまい肌の抵抗力が落ちて皮膚炎ができるものです。頭皮にできる人も多く、現代特有の皮膚病です。

多くの場面で石けんで手を洗いましょう!と言われることが増えました。

インフルエンザやノロウィルスなど、感染症の脅威にさらされたとき、多くの人が1日に何度も、薬用石けんでゴシゴシ手を洗い、お母さん方は子どもたちにも何度も「手洗い、うがいをしないさい」と言います。

もちろん、手を洗うことは大事ですが、「薬用石けんでゴシゴシ」はいけません。手についたウィルスなどは、水道水を流しながら10秒も洗うと、落ちます。殺菌効果の高い薬用石けんで1日に何度も手洗いすると、ちゃんと皮膚常在菌という皮膚を守ってくれる細菌まで殺菌してしまって、かえってウィルスなどが皮膚に付着しやすくなります。

皮膚常在菌には、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌をはじめとする約10種類以上の細菌があります。これらは皮膚の脂肪を食べて、脂肪酸の膜をつくり、皮膚を弱酸性に保ちます。そうして酸に弱い病原菌をシャットアウトしてくれるわけです。

洗いすぎると、その皮膚常在菌のつくる皮脂膜がはがれ、その下にある角質層に隙間ができてしまいます。皮膚を組織している細胞が、バラバラになって、ここから、ウィルスが侵入してしまうのです。

これは、アレルゲンについても同じです。手を洗いすぎて肌がカサカサになると、角質層の隙間からアレルゲンが侵入し、アトピー性皮庸炎や乾燥性皮庸炎を引き起こすことになるのです。

子どもたちにも、外で遊んで帰ってきた後や食事の前に手洗いさせることは必要ですが、よほどひどい汚れでない限り、薬用石けんは必要ありません。石けんを使うのは、1日に1、2回くらいでいいでしょう。

また、うがいについても同じことが言えます。ふだんの何でもないときにも殺菌作用の強いうがい薬を使うと、のどを守る菌までやっつけられ、逆に風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。

日常的にはお茶や塩水でうがいをして、のどが痛いときだけ殺菌作用のあるうがい薬でうがいをすれば十分です。

以前、若い女性に「顔の肌がカサカサを通り越してゴワゴワ、ボロボロになってしまい、皮膚科に行っても治らない」というものがありました。

よく話を聞くと、その若い女性はとても神経質で、1日に5回も石けんで洗顔していることがわかりました。肌にトラブルがあったので「しっかり顔を洗わなくちゃ」と思ったのかもしれません。

にきびや吹き出物の半数以上は、洗いすぎによる皮脂の減少です。

すぐに過剰な洗眼で皮膚の常在菌がやられたとわかったので、「とにかく1ヶ月間、顔を洗うときに絶対、石けんを使わないでください。お化粧もしないでください。それで様子をみましょう」とアドバイスしました。たったそれだけのことですが、彼女の顔は2ヶ月でキレイに治りました。専門家の実験によれば、お風呂に入って石けんで体を洗うだけで、皮膚常在菌の90%が取れてしまうことが確認されています。

しかし、10 %が残っていると、若い人なら12時間で戻ります。ですから、若い人は1日に1回か2回くらい、石けんで体や顔を洗うのは支障ありません。しかし、年をとると、皮膚常在菌の発育が悪くなります。40歳以上になると、回復に20時間ほどかかります。

風呂には毎日入っても、石けんで洗うのは2日か3日に1回で十分なのです。美肌をつくるのに、洗いすぎは逆効果なのです。

抗菌・除菌グッズは肌には逆効果

抗菌・除菌グッズも石けんと同じように大流行しています。趣旨としては、「私たちの身の回りには、至るところにバイ菌がいるので、汚いものは寄せつけないように清潔にしましょう。イヤな匂いもいっばいあります。全部、無臭にしましょう」といったところでしょうか。

この種の商品には、細菌やカビ、匂い、虫などを防止または排除する効果が加えられています。いまや、食器洗いや洗濯で使う洗剤はもとより、台所用品、浴室用品、衣類、文房具等の日用品から、家の建材や内装材まで、さまざまな物に抗菌・除菌加工が施されています。今後もますます抗菌・除菌を謳った商品が増えるでしょう。

しかし、「抗菌・除菌」という言葉に明確な定義はないし、いったいどんな成分が含まれているのかもよくわからないのが実情です。しかも、先はどから述べているように、強い抗菌・除菌効果のあるものは、皮膚の常在菌のバランスを崩す危険があります。

とくに危険にさらされているのは、子どもたちです。子どもの肌は透き通るようなしっとりツルツル、とても柔らかいですが、それだけに大人に比べて、皮膚を守るバリア機能が弱く、ウィルスや細菌、はこりや汚れなどが侵入しやすいのです。いわゆる敏感肌です。

その柔らかな肌に強い抗菌・除菌作用のあるモノが触れたら、皮庸常在菌は一発でやられてしまいます。実際、抗菌マスクをした子どものなかには、口の周りがアレルギー性皮膚炎になってしまった、というケースもあるようです。「大事な子どもだから、清常に育てたい」

という親の気持ちもわからなくはありませんが、それは間違っています。大事な子どもだからこそ、細菌やウィルスを遠ざけてはいけないのです。神経質なお母さんは、とりあえず抗菌・除菌グッズをなるべく使わない生活から始めてみてはいかがでしょうか。
私たちの身の回りにいる細菌の多くが、よいこともしているとわかれば、だんだんに「清潔に対する免疫」ができてくると思います。

ウォシュレットの弊害

近年、若い層を中心に、膣炎になる女性が増えています。その理由と目されるのが、ウォシュレットによる洗いすぎです。女性の膣がキレイなのは、膣内にデーデルライン乳酸菌という細菌がいるからです。これは膣内環境にとって善玉菌なのです。グリコーゲンを食べて乳酸を産出することによって、膣を酸性に保ち、雑菌から守ってくれているのです。
ところが、「洗えばキレイになる」とばかりに、オシッコのたびにビデで洗っていると、デーデルライン乳酸菌が流されてしまいます。すると、乳酸ができなくなるので、膣は中性になります。結果的に雑菌を増殖させ、おりものが出てきて、膣炎になってしまうわけです。

ビデを使うと、膣がキレイになるように錯覚しがちですが、実は汚くしている、ということなのです。

トリコモナス膣炎という病気がありますが、病原体とされているトリコモナスは、実は組織を傷つけているわけではありません。実際、尿道でトリコモナスを飼っている男性の多くは、痛くもかゆくもないのです。しかし、セックスによって男性がそのトリコモナス原虫を女性の膣に運ぶと、デーデルライン乳酸菌のエサであるグリコーゲンを横取りします。それで、デーデルライン乳酸菌はエサを失って生きることができず、膣内に乳酸がなくなって中性になります。当然、雑菌が増殖し、おりものが出てきて炎症を起こします。

膣カンジダ再発の薬
https://kusiri-guide.com/archives/27

つまり、トリコモナス膣炎も膣の洗いすぎによる膣炎も、デーデルライン乳酸菌がいなくなるということで、原因は同じだということです。さらに怖いのは、妊婦の場合、ビデによる洗いすぎが早産や流産をも誘発する危険性があるのです。

「習慣的に温水洗浄便座を使用している人は、使用していない人に比べて、膣内の善玉菌である乳酸菌が著しく消失し、腸内細菌などによる汚染が目立ち、紳菌性膣症にかかりやすくなっていた」と結論づけました。

この調査は、妊娠していない19~40歳の女性で、温水洗浄便座(ウォッシュレット)を習慣的に使用している(使用者)人154人と、まったく使用しない、または、ときどき使用している(未使用者) 人114人を対象に実施されました。彼女たちの膣内分泌物を採取・分析した結果、乳酸菌を保有していない症例は、温水洗浄便座の未使用者でわずか8.7% であるのに対して、使用者では42.86% と、約5倍に上ることがわかりました。

さらに、腸内細菌が膣内から検出された症例の92%は温水洗浄便座の使用者であることも判明しました。

この調査結果からわかることは、日常的にビデで膣を洗う女性は、乳酸菌を洗い流したために、雑菌に対する抵抗力が低下しているということです。
それだけ膣炎にかかるリスクは高く、また早産や流産の原因の50~60% が膣炎であることから早産や流産をも誘発する危険がある、ということです。

お尻が痛いという男性が増えた

最近は若い男性を中心に、「便の後に温水洗浄便座を使わないと、お尻が痛くなる」人たちが増えています。肛門周辺が炎症を起こし、かぶれたり、ただれたりするからです。

これもやはり、お尻の洗いすぎによるものです。温水洗浄便座は1日にl回程度の使用なら問題はないし、痔の患者さんにとっては痛みを緩和してくれるありがたいものです。

でも、過度に使うと、お尻を守ってくれている皮膚常在菌を洗い流してしまうのです。当然、皮膚の抵抗力は弱まります。

近頃は、便座に座ってオシッコをする男性が増えていて、彼らの多くが排尿すると条件反射的に肛門に温水をかける傾向があるそうです。

なかでも大阪は、女性が強いせいか、「しぶきが飛ぶから、座ってオシッコしなさい」と言われて「温水洗浄便座派」の男性が多いという統計があります。
皮膚常在菌が流きれると、肛門周辺の皮膚が中性になります。すると、肌荒れと同じで、皮膚の角質層に隙間ができて、便のなかの普段は悪さをしない細菌が侵入して炎症を起こすのです。

ようするに、お尻を洗うのをやめれば、すぐに治るのですが、炎症を起こすと「もっとキレイにしなくては」と思うのでしょう。温水洗浄便座を使うだけではなく、お風呂に入って一生懸命に石けんでゴシゴシ洗ったりして、ますます炎症がひどくなるケースがよく見られます。

思い当たるふしのある男性は、しばらく温水洗浄便座を使わないようにしてください。炎症がひどい場合は時間がかかりますが、やがて皮膚常在菌が戻ってきます。そうしてお尻の健康を取り戻したら、1日に1回程度の使用に留めるといいでしょう。

ちなみに、女性には肛門の炎症があまり見られません。温水洗浄便座を使うのは便のときだけで、あとはもっばら「前」のほうを洗っているからだと思われます。

清潔関連ビジネスはお金になるという好都合

過剰清潔社会のカラクリがわかると、「どうして、世の中の清潔志向に歯止めがかからないのだろう」と不思議になってきます。

その理由の1つは、日本人の誰もがすべての寄生虫や、ウィルス・細菌が人間に害をおよぼす敵だと強く思っていることだと考えられます。これは多くの人の頭に刷り込まれているのです。

そして、もう1つの理由が、その思い込みを利用して、抗菌・除菌・消臭などと謳って、バイ菌を排除する商品が世に送り出されていることです。

しかしメーカー側は研究もしていますから、必要以上に菌を排除すると、逆に体に悪影響をおよぼすかもしれないことを知っているのです。それでも、過剰清潔社会を目指す世の中の流れに乗ったほうが、お金になるということでしょう。

消費者はもっと賢くならなくてはいけません。いつまでも抗菌とか除菌、消臭といった言葉に踊らきれていると、体が弱くなるばかりです。キレイ社会というのは言い換えれば、「異物を排除することを良し」とする社会です。

時と場合により、人間に悪さをする菌を排除することは大事ですが、何も悪さをせずにl万年の昔から人間と共生し、アレルギーを抑えることにも貢献してくれている菌まで悪者扱いするのは問題です。

キレイ社会の副産物とも言えるアレルギーにならないようにするためにも、私たちはそろそろ極端な清潔信仰と決別するべきでしょう。キレイの認識を改める時代がきているのでしょう。

アレルギーは、60年代頃から急増

花粉症は突然に始まったアレルギー症状

時期になると、TV CMでは花粉症の薬を徹底的にPRします。それだけスギ花粉に困っている人が多いということです。
日本で初めてスギ花粉症の症例が認められたのは、今から約50年以上前の1963年頃です東京医科歯科大学の斉藤博士が発見しました。

症状を訴えたのは栃木県日光市に住む成年男性でした。原因はもちろんスギ花粉ですが、日光のスギ並木は花粉症が発生したその年に植えられたものではありません。17世紀前半に、全長37km、約2万4千本のスギが植えられました。

つまり、スギ花粉は昔から飛んでいたのです。しかし、昔の人はそのスギ花粉を吸っても、スギ花粉症にはならなかったのです。

ということは、昔の人にはスギ花粉を異物として排除する機能が、体内に備わっていたのだと推測できます。

スギ花粉症は第一号患者が出た,63年から毎年のように増加しました。60年代半ばといえぼ、ちょうど結核や寄生虫の感染者が減り、清潔志向が高まっていく頃です。

それと同時にその他の花粉症やアトピー、ぜんそくなどのアレルギー性疾患も猛威を振るい始めました。

ドイツでは西と東でアレルギーの発症の仕方が異なる

アレルギーが急増したのは、日本人だけではありません。ドイツ人、正確に言えば旧西ドイツ人も同様です。しかし、同じドイツ国民でも旧東ドイツ人の間ではアレルギーがまったく増えていません。

ドイツのすべての医科大学でアレルギーの患者さんたちを調査すると、旧西ドイツ人のほうが旧東ドイツ人よリ3~4倍も多かったのです。たとえば、9~11歳の子どもたち7800名を対象とする花粉症の調査では、旧西ドイツ児童の8.6 % 、旧東ドイツ児童の2.6% に花粉症が認められました。約3.3倍の人数に当たります。

ベルリンの壁によって東西のドイツがわかれていた頃、旧西ドイツでは、工業の発達と共に、大気汚染などの公害への対策や住環境、食品添加物や農薬などに対する法的基準の整備も行われていました。

そして、清潔志向が人々の間に浸透し、免疫力を高めてくれている細菌類を一方的に追い出した「キレイ社会」になっていたのです。このような「キレイ社会」が免疫力低下を導き、花粉症ばかりでなく、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患を生みだしたのです。

なぜ急速にアレルギーが増えたか?

私たち人間の体は、1万年前とまったく変わっていません。体を構成する細胞は同じだし、体に備わっている免疫システムも同じです。これは、1996年から、医学者や生物学者、遺伝学者、生態学者などが一堂に会して議論を重ねてきた「人類の家畜化現象を考える研究会」で出した結論です。

ではなぜ、1万年前と同じ紳胞を持つ人間に、急にアレルギーが増えてしまったのでしょうか。その大きな原因として、人間が文明の名の下に、より快適でよりキレイな環境をつくってしまったことがあげられます。

l万年前、人類は裸・裸足でジャングルや草原を走り回っていました。自然とともに、体をめいっばい動かして、元気に生きていたのです。しかし、38億年という生物の歴史から見れば「ほんのまばたきをする一瞬」に過ぎない1万年の間に、人類の生活環境は一変しました。

とりわけ、ここ50~60年の変化は凄まじいものがあります。山奥の土地に住まない限り、現代人は極端な話、清潔でキレイな小屋にこもり、ファストフードやコンビニ食などの便利で安い餌で飼い慣らされた「家畜」のようになってしまったのです。

アレルギーの発症だけではなく、生きる力そのものが弱ってきたと言えるかもしれません。しかし、この流れは今後も続くでしょう。人間は文明を発展させることがいいと思っている、珍しい生き物だからです。

問題は、体のはうが急激な変化についていけないことです。自然と切り離されて、身の回りにあったはずの菌を退治した「キレイすぎる社会」に、体はそう簡単に馴染むことができないのです。