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腸内細菌には個性がある

細菌類で個人識別が可能

皆さんの腸に棲んでいる細菌類は個人識別が可能なくらいそれぞれで異なっていることをご存知ですか。私が持っている腸内細菌と同じ構成をした腸内細菌叢を持っている人は世界にだれもいないというわけです。

これまで腸内細菌は培養できる菌のみで説明されていました。しかし、最近ではすべての細菌類が持っている16SリボゾームRNA遺伝子の塩基配列で細菌類を同定することができるようになりました。

また、「メタゲノム解析」といって細菌全体の遺伝子を解析したりすることで細菌類を調べることが可能になりました。こうした方法で腸内細菌の種類と数を調べてみると、培養できる菌にくらべて今までより種類も数も10倍ぐらい多いことがわかりました。

最新の検査法で腸内細菌の全体像を調べてみると、腸内細菌の約4分の3が納豆などの6発酵食品に含まれている菌、人の皮膚などに存在する菌、土壌菌などの仲間の菌などで構成される「ファーミキューテス門」の細菌だったのです。

次に多いのが日和見感染症などを起こす菌などを含む「バクテロイデーテス門」の細菌類で、次が大腸菌類を含む「プロテオバクテリア門」の細菌類です。

つまり、腸内細菌の大部分は日和見菌だということです。ビフィズス菌など善玉菌などを含む「アクチノバクテリア門」の細菌類はもっとも少なく、腸内細菌全体の10%以下しか存在していませんでした。

生まれてすくの腸内細菌叢の組成はずっと変わらない

そしで、それらの腸内細菌をさらに詳しく調べてみると、その組成は個人個人で異なり、生まれてすぐの腸内細菌叢の組成が死ぬまで変わらないことがわかったのです。

この腸内細菌叢は同じ衣食住環境で育っても、血縁関係が同じであっても、一卵性双生児問でも異なっていました。つまり、同じ家に住んで、同じご飯を食べていて、血縁関係があっても、個人はそれぞれ独自の細菌叢をもっていて、腸内細菌には個性があるということなのです。

私たちの腸内細菌がどのような経緯によって、個性を持つかというと、生まれる環境やその後の生活環境や食習慣が大きく影響しているようです。

1.出産方法

赤ちゃんは、胎内では無菌状態で育ちますので、出産方法でも違いがあります。産道を通って生まれるのか、帝王切開か。産道には、さまざまな菌がいて、それらをどの程度取り込むかによっても違いが生じます。出産した病院によっても、腸内細菌に差があるという研究もあります。

2.生活環境

抗菌剤や除菌剤を多用する過度の衛生状態は、腸内細菌にも影響を与えます。腸内に入ってくる細菌自体も減りますし、腸内細菌自体を傷めつけることになってしまいます。

3.食生活

食物繊維が多い食事、高脂質の食事、保存料を使用した加工食品の食事などによっても、腸内細菌は影響を受けます。人それぞれ持っている腸内細菌叢が違うわけですから、自分の腸内細菌たちを今まで以上に可愛がっていただきたいものです

腸内では縄張り争いが盛んに行われている

腸内で縄張り争いをする3グループ

健康な人の腸内にはこれまで、およそ100兆個、100種の腸内細菌がいるとされていましたが、最新の研究ではその10倍、1000兆個、1000種類以上の腸内細菌がいることが判明しています。

そして、それらは3つのグループに分けることができます。

  1. 善玉菌
  2. 悪玉菌
  3. 日和見菌

の3グループです。一番よく知られているのは、善玉菌のグループでしょう。テレビコマーシャルなどでもよく耳にしますね。
これらは人が健康でいることをサポートしてくれる菌で、強い抗酸化酵素をもっています。ヨーグルトなどに含まれるビフィズス菌、乳酸菌、腸球菌などがその一例です。

これに対して、増えすぎると体内で悪さをするのが悪玉菌です。悪玉菌の酸化酵素は、未消化のタンパク質を腐敗させて毒素を発生させます。その毒素は免疫力を低下させてしまうので、ガンをはじめさまざまな病気のリスクを高めます。また、美容に悪影響を及ぼし、老化を促しもします。代表的な悪玉菌はウェルシュ菌です。

助け合う善玉菌と悪玉菌

悪玉菌の悪いところばかりを挙げてしまいましたが、悪いことをするばかりではありません。体外から入ってくる有害物質をやっつける働きをしてくれるので、悪玉菌もまた腸内には必要な菌なのです。

勘違いされやすいのですが、悪玉菌といってもそれ自体が強い毒性をもっているわけではありません。健康で免疫力が高い人なら、悪玉菌の毒性で体調を崩すことはないのです。悪玉菌が病原性を振るうのは、免疫力が下がっているときだけです。

悪玉菌と善玉菌とはエネルギーのやりとりをしている、ということも最近わかってきました。そもそも腸は本当に害になる病原菌が侵入してきたら下痢などの症状を起こし、懸命に排除しようとしますが、ウェルシュ菌や大腸菌程度の悪玉菌であれば、その存在を許容しているのです。
なぜなら、善玉菌が歯が立たない病原菌などを悪玉菌が退治してくれることさえあり、腸全体でみれば、善玉菌と悪玉菌とはうまいバランスで成り立っているからです。

理化学研究所の研究チームによる、病原性大腸菌o-157とその予防効果があるビフィズス菌との関係についての研究があります。核磁気共鳴法(NMR)を使って、双方の菌が作り出すアミノ酸などの有機物を分析し、腸内での関係性を調査したものです。

この研究ではビフィズス菌が果糖などの糖分を取り込んで酢酸を作り、o-157の出すシガ毒素から腸を守っていることがわかりました。
しかし、その際、o-157の数や放出される毒素の量はビフィズス菌を与えても減ってはいなかったのです。

さらにたいへん興味深いことがわかりました。ビフィズス菌が糖分などからアミノ酸を作り、そのアミノ酸をo-157が取り込んでコハク酸などの有機酸に変え、自分のエネルギーにしていたのです。

つまり、o-157はビフィズス菌に退治されるわけではなかったのです。ビフィズス菌はo-157の毒素による腸の炎症は抑えつつも、o-157菌に対しては退治どころか、エネルギーを与えていたということになります。

和見菌を味方につけろ!

そして3つ目のグループが日和見菌で、これは中間菌とも呼ばれでいます。名前のとおり、善とも悪とも言いきれない菌たちを指します。

あまり馴染みはありませんが、実は腸内細菌のほとんどがこの日和見菌です。日和見菌が善とも悪とも言いきれないのは、その時々でどちらの味方にもなるからです。

腸内が善玉菌優位のときは善玉菌のサポートをしますが、悪玉菌優位のときは一緒になって悪さをするのです。善玉と悪玉の両方を見て、優勢なほうに味方するわけで、まさに日和見なのです。腸内細菌のなかで多数を占める日和見菌に悪さをさせないためにも、腸内を善玉優位のバランスに保つことが重要です。