腸内細菌の個性」カテゴリーアーカイブ

断食

断食や絶食は、腸と体を弱らせる

「断食が体によくない理由は

断食は腸にいいのか?悪いのか?

最近では「プチ断食」とか半日断食などといった絶食する健康法が流行っているようで、私もよく「断食は腸にいいのでしょうか? 」といった質問が増えています。

結果から申しあげますと、私は「断食は腸に悪い」と思っています。そもそも食事をとらないと腸管が使われず、腸の粘膜が急速に萎縮していきます。
繊毛が萎縮し、腸での粘液分泌が減少して、腸管の動き自体が悪くなっていきます。

それにともなって腸内細菌叢も変化し、ウェルシュ菌や大腸菌といった悪玉菌の増殖が見られるようになります。この際に、腸が持っているバリアー機能が低下していると、腸管内で繁殖したこれらの細菌は腸壁の毛細血管に侵入してしまうことがあるのです。これは専門的には「バクテリアトランスロケーション」」といい、全身の感染症へと移行することもある、危険な状態なのです。

あぶない「リーキーガット症候群」

最近では、腸から食物分子や腸内細菌が漏れて体内に侵入する「リーキーガット症候群」(腸管壁浸漏症候群)という言葉もよく使われるようになりました。

食物アレルギーの幼児も「リーキーガット症候群」が原因だと考えられています。腸の壁の繊毛は薄い膜で覆われており、腸内細菌や病原微生物の侵入を防ぎながらも、胃で分解された食物の栄養素を吸収しています。
この粘膜が破れると細菌類が体内に侵入するだけではなく、食物が十分消化されない段階の、まだ大きな分子のままで体内に吸収されてしまうのです。食物が小さな分子に分解され体内に侵入した場合は免疫反応は起こりませんが、大きな分子が体内に入ると体内でアレルギー反応が起こるのです。

繊毛に存在する膜はある一定以上の食物分子は通さないようにできていますが、これが破れると大きな食物分子まで通してしまうのです。この膜バリアーは、化学薬品アルコール、抗生物質などによって、また精神的ストレスによって簡単に破れてしまうのです。

健康観

健康観は正しいでしょうか?

医学の常識が正しいとは限らない

医学界の常識は、世間の…

こちらの通り、寄生虫とアレルギーの関係はすでに科学的にも証明されました。

医学界の常識はいつのまにか180度ひっくり返ってしまうことがあるのです。医学界の常識のおかしさは、さまざまな健康観に反映されでいます。

たとえば、最近「メタポリック症候群」という言葉をよく耳にするようになりました。少し太りだすと「メタボだ」と言われてダイエットを要請されたりするのですが、そんな現状を、私はちょっとおかしいなと思ってみています。

欧米と違い、日本には治療が必要なほど太っている人は、あまりいないと思うからです。そもそも、肥満の基準自体を疑ってみる必要があります。

日本肥満学会で定めたウェストサイズの「正常値」は、男性の場合管85センチ以下、女性の場合は90センチ以下です。つまり、これを超えるとメタポリックシンドローム(代謝症候群)だといわれてしまうわけです。

しかし、国際糖尿病連合の基準値は、男性の場合90センチ、女性の場合は80センチです。アメリカの基準値は男性の場合103センチ、女性の場合は89センチ。中国では男性90セチ、女性80センチです。

世界の基準と比べてみると、いかに日本の基準が厳しいものかがわかります。男性の場合は特に、日本の基準値を数センチ超えていたからといって、生活習慣病にかかるリスクが特別高い状態だとはいえないのです。

体重を身長の2乗で割って算出する肥満数値 BMIも同様で、日本肥満学会はBM I25以上を肥満とし、厚生労働省は22~23を望ましいものとしています。しかし、BM Iが22~23 の人が特別に長生きするという裏づけはどこにもありません。

反対に、国立がん研究センターのによる調査では、BMIがおよそ23~27の人が長生きで、それより太っていてもやせていても死亡率は上がっていく、という結果が出ました。

アメリカでも同様の調査が行なわれ、その結果はBMIが25~29.9の人が一番寿命が長かったのです。BMIが25~29.9の人は肥満とされる数値です。

おかしなコレステロールの数値

コレステロールの基準値も眉唾モノです。日本では稔コレステロールの正常値は120~220mg/dl 、つまり上限値は220mg/dlされています。

しかし、他国の基準値をみてみると、上限値は260~270mg/dl ほどです。20011年に、日本動脈硬化学会は総コレステロールの上限値を220~240mg/dlに引き上げました。

一気に20mg/dlも引き上げられたということが、基準値はあてにならないものだといっているように思えてなりません。

コレステロール値と死亡率の相関関係について調査した、報告も目を惹きます。女性の場合は総コレステロール値が159mg/dl以下では死亡率に差があり、それ以上の値では差はあまりなかったのです。

男性の場合は279mg/dlまでは総コレステロール値が高くなればなるほど死亡率は下がっていました。つまり、男性の場合、日本の基準値である220mg/dlを超えでも、280mg/dlくらいまでなら、特に気にしなくてもいいということです。

もちろん総コレステロール値が高過ぎるのはよくありませんが、低過ぎるのも健康的とはいえません。コレステロールは悪者で数値が低ければ低いほどいいと思っている人も多いようですが、それは間違いです。

総コレステロール値が低いと、性ホルモンの分泌量が減少します。性ホルモンの量が減ると、身体機能が低下し、ガンやうつ病などさまざまな病気にかかりやすくなります。
安定したコレステロール値のために積極的に摂りたい5つの栄養素

ご自身の健康を考える際には、その基準が正しいものなのかどうかを考え直してみる必要があるかもしれません。

菌や寄生虫

まだまだ誤解が多い菌や寄生虫について

寄生虫には人間が病気にならないように見張ってくれる存在でも。

寄生虫で免疫が高まる

「寄生虫」と言っただけで、多くの人がいやな顔をしますが、そこには誤解がります。人間を宿主とする寄生虫なら、少しくらいおなかに寄生していても問題はありません。

人間に宿る寄生虫は、人間の体に悪さをするどころか、大事にしてくれるからです。これは考えてみれば意外でもなんでもない話で、寄生虫は寄生した人間が死んでしまうと、一緒に死んでしまいます。

寄生虫にとっで人間が病気になって食欲が落ちることは、自らの死活問題です。つまり、自分が元気で長生きするためには、寄生している人間にも元気で長生きしてもらうことが、どうしでも必要だというわけです。

言い換えると、人間を宿主にしている寄生虫は人間が病気にならないように見張ってくれる存在なのです。ですから、寄生虫は宿主の人間の免疫細胞を刺激し、人間が病気にならないようにしてくれるのです。

かつて、検査で判明したのは、私のおなかの中には、「日本海裂頭条虫」というサナダムシが15年ほどいましたが、このことが原因で体に不調を覚えたことはありませんでした。こうしたサナダムシをおなかの中で「飼っていた」おかげで、元気に暮らせているのだと思っていました。

危ない寄生虫やウィルスもいる

ただ、注意してほしいのは、すべての寄生虫が人間とうまくやっていけるのではないということです。人間にとって安全なのは、付き合いの長い、人のなかで子どもを産める、人間を宿主にしている寄生虫だけです。

昔から人間に寄生してきた歴史のある虫以外は、人問に悪さをする危険性があります。たとえば、キタキツネに寄生する「エキノコックス」というサナダムシは、宿主のキタキツネは大切にするものの、人間のことは大切にしてくれません。

エキノコックスが人間の肝臓や肺、心臓に寄生してしまうと、最悪の場合、命を落とすこともあります。ウィルスも寄生虫同様、長く付き合いのある宿主以外を攻撃する性質があります。

一時期、脅威をふりまいたSARS ウィルスはハクビシンの命は奪いませんが、人間の命は保障してくれません。鳥インフルエンザも、カモには悪さをしませんが、トリの命は奪ってしまいます。

エボラ出血熱ウィルスも、ミドリザルには何の悪さもしないのです。人間は、このような危険なウィルスなどと闘う一方、いろいろな菌や寄生虫と共生して生きてきました。

つまり、共生したほうがよい菌や寄生虫もいれば、排除しなければならない菌や寄生虫もいるというわけです。一律に「寄生虫は悪者で、菌は汚いものだ」という発想は独善的なだけではなく、役立つ寄生虫、役立つ菌までを排除してします、人間のためにもならない考え方だったのです。

過剰なキレイ好き

こんなにキレイ好き社会なのにアトピーが増えるのは

アレルギーが増えてしまった

私は長年、寄生虫とアレルギーとの関連について研究しています。そのなかで、人間に寄生した寄生虫は、人間の体内でアレルギー反応と関係があるIgE抗体を大量につくり出すことがわかったのです。

寄生虫が出す分泌・排泄液の中に、タンパク質としては比較的小さな、分子量2万のタンパク質があっで、それが花粉やハウスダストなどのアレルゲンと反応しないIgE抗体を多量に産生していることが確認されていまう。

この寄生虫の分子量2万のタンパク質が産生した多量のIgE抗体がアトピー性皮膚炎や花粉症などといったアレルギー疾患の発症を抑えていたのです。これは、ハンブルグ大学による次のような調査によって裏付けされています。旧西ドイツと旧東ドイツとでは、人種的には同一であるはずなのに、アレルギー疾患の患者さんが旧西ドイツのほうにより多くいました。

そこで、旧西ドイツと旧東ドイツの子どもたちの血中のIgE抗体の値を調べたところ、旧東ドイツの子どもたちのほうが高いという結果が出ました。

そこから、「旧西ドイツの生活水準が上がって寄生虫が減り、IgE抗体の値が下がったことがアレルギー疾患の増加を招いた」という結論が導かれました。ちなみに、日本でも同様の調査結果が出ています。日本初の花粉症患者が現れたのは、1963年です。1960年に10%を切った寄生虫感染率が、1965年には5%を切るまでに下がっていく最中の出来事だったのです。
つまり、日本に寄生虫が減ったことが、花粉症が出現した理由の1つだということができるのです。

皮膚の常在菌が守って< れている

寄生虫の減少以外にも、現代にアレルギー疾患が増えている原因はあります。それは、日本人がきれい好きすぎることです。

現代の私たち日本人は「抗菌」グッズが大好きですが、抗菌であることは必ずしもいいことでありません。抗菌素材が使用されたグッズを使いすぎることで、本来必要な菌までも私たちのまわりからいなくなってしまいました。

あらゆる菌を生活から追い出したことで免疫力が下がり、アレルギー疾患が増えてしまったのです。たとえば、皮膚の常在菌は、除菌仕様の石けんなどを使うと殺されてしまいます。そもそも人間の皮膚には、ブドウ球菌、アクネ菌などの常在菌が存在しでいます。

この菌たちは皮膚の表面にある脂肪を食べて分解し、弱酸性にしてくれるので、これにより私たちの皮膚は守られているのです。

これを石けんなどで洗い流してしまうと、約90%の常在菌が失われ、若い人でも元の状態に戻るのに12時間を要するのです。歳をとってくると20時間かかる人もいます。

そして、常在菌がなくなった肌は角質がはがれたもろい状態になるので、アレルギー物質が入りやすく、アトピー性皮膚炎を起こしやすくなります。農薬や防腐剤、化学調味料や食品添加物を多く摂取すると、除菌石けんで皮膚の常在菌が殺されてしまうように、腸内細菌は数を減らしてしまいます。その結果、免疫力が下がり、アレルギー疾患を起こしやすくなってしまうのです。
アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎用のロングセラースキンケア用品「美肌精油ジェル」は3点セットで使う

コレラ菌

コレラ菌が体内に入っても下痢をしなかった

自分の体で、人体実験

腸内環境の重要性を実感していただくために、ここで少し私のエピソードを紹介しましょう。これは私が行なった「人体実験」の話です。

その昔、私はアメリカで実験のためにコレラ菌を飲んだことがあります。まさに自分自身の体を使って人体実験をしたわけですが、私は直感的に「腸内環境さえよければ、コレラ菌を飲んでも体に影響は出ない」と感じていたのです。私の直感は正しく、おなかの調子はまったく悪くなりませんでした。

腸内細菌の大切さを自分の体で証明したわけですが、続いで私は「抗生物質を飲んでから、コレラ菌を飲んだらどうなるのだろう? 」と考えました。

思いついたらやらずにおれない性分で、抗生物質を飲んで腸内細菌を弱らせたあとにコレラ菌を飲んでみました。われながらスゴイ実験をしたものとあとになって自ら感心したのですが、その結果、これまた私の直感どおり、ひどい下痢になってしまいました。

私はこうしてコレラ菌が悪さをするかどうかは、ひとえに腸内環境によるということを身をもって体感したのです。たくさんの菌がいる場所では、1つの菌が思うままに悪さをすることはできません。それぞれの菌が増えたいと行動するのですから、1つの菌だけが増殖するのは到底許されないというわけです。

インドネシアでの逆転現象

これは人間の腸内環境だけに限った話ではありません。それを目の当たりにしたのは、インドネシアのカリマンタン島に行ったときでした。

当時、インドネシアに滞在していたのですが、住んでいたのはカギもついていない、川べりの民家でした。なぜ川べりだったかというと、もっとも便利な交通手段が船だったからです。

ここではトイレは川の上にあり、落としたウンコを魚が競い合って食べるのですが、このウンコがプカプカ浮かんでいる川のなかで、女の人が洗濯をしたり、子どもが泳いで遊んでいたりするのです。そんな汚い川で遊んでいたら病気になってしまうだろうと心配したのですが、何度となくそこを訪れても、子どもたちはとても元気でした。

それは、子どもたちが特異体質だからではありません。川にたくさんの菌がいたからです。たとえ病原菌がいたとしても、ほかの菌が数えきれないほどいるのですから、悪さをすることはできないのです。

汚く見える川は、実は安全な遊び場だったというわけです。反対にジャカルタ市街に敷かれている水道管は原水に塩素を大量に入れて菌を殺しています。すると、どこかから忍び込んだ病原菌にとっては増殖しやすい環境になっていて、爆発的に病原菌が増殖しでしまうことがあります。インドネシアでは市街地の水道水よりも川の水のほうが危険性が低いという逆転現象が起こっているのです。

出過ぎも出なさすぎも原因は同じ

出過ぎも出なさすぎも原因は一緒

下痢と便秘が起こる原因は同じ

排便の状態は莫逆でも、下痢と便秘はどちらも同じ理由で起こることがあります。下痢と便秘を交互に繰り返す人がいるのは不思議なことではなく、当たり前に起こりうることなのです。

下痢と便秘は、腸内細菌のバランスの乱れ、もしくは精神的なストレスが引き起こしているのです。ストレスを感じると、腸内環境はどんどん悪化していきます。善玉菌が減少し、悪玉菌が増えてしまうのです。
ストレスは、自律神経にも悪い影響を与えます。
交感神経の緊張が高まると、それに伴い全身の緊張も高まります。その結果、リラックスすることができなくなり、体のあちこちに不調が起こります。

腸が適当なバランスを失った状態で、さらに交感神経が高ぶってしまうと、便秘か下痢になってしまいます。どちらになるかは人によって違うのですが、いずれにせよ、自然な排便ができなくなってしまうのです。傾向として、男性は痢になりやすく、女性は便秘になりやすいようです。

各駅停車症候群

下痢型の過敏性腸症候群の患者さんの多くは、男性です。過敏性腸症候群は、常にトイレに駆け込みたくなる不安に苛まれるため、通勤に急行電車や快速電車を使うことができないことから、別名「各駅停車症候群」と呼ばれています。

不安感・不快感が強い、現代病の1つだといわれています。女性に多い便秘は、美容に悪影響を及ぼします。便秘になると、肌が荒れ、化粧ののりが悪くなります。体がむくみがちになり、腹部が張っで気分がすぐれなくなります。

便秘も下痢も原因は同じですから、解決法も基本的には同じものです。下痢と便秘を解消するには、一番の要因であるストレスを軽減することがなによりの方法です。激務によるストレスに毎日さらされている人は、休みをとって家で休養をとったり、旅行に出かけたりしてみましょう。

不規則な生活を続けている人は、生活のリズムを見直すことです。早寝早起きを心がけ、バランスのいい食事を規則正しく摂るようにしてみましょう。そうした心がけで腸内環境は少しずつ改善し、下痢や便秘もよくなっていくはずです。

便秘に下剤は危険

ストレスを軽減させるというのは、下痢と便秘に共通する解消法ですが、それぞれに気をつけるべきポイントがあります。まず下痢ですが、下痢止めの薬は飲まないほうがよいでしょう。しかし、いま病院で処方される下痢の症状への薬は、腸内細菌を固めたようなもので、腸内環境を正常化するのに役立ちます。

市販薬なら「ビオフェルミン」が似た効能を期待できますし、腸内の善玉菌を増やすには、後述する「乳酸菌生成エキス」がおすすめです。便秘にも下痢と同じような腸内細菌叢を正常化する薬や「乳酸菌生成エキス」が有効なのです。習慣的に下剤を飲むようになるのは、非常に危険です。

下剤は便だけではなく、腸内のあらゆるものを強制的に流し出してしまいます。必要な腸内細菌が排出されてしまった結果、免疫力が落ち、病気にかかりやすくなってしまうのです。

下痢の場合は薬に頼るのではなく、水の飲み方や食生活に重点を置いた改善法がベストでしょう。それでは次にそれぞれの場合の食事の注意点をまとめてみたいと思います。

下痢の場合

やわらかく、消化がいいものを選んで摂ってください。おかゆや柔らかめのご飯、魚なら自身、肉なら鶏ささみがおすすめです。野菜ならゴボウなど固い繊維質のものは避け、繊維の柔らかいバナナやレタスなどを選んでください。油分を多く含む食品は、消化が悪いので摂らないようにしましょう。

便秘の場合

食物繊維が多く含まれたものを選んで食べるといいでしょう。食物繊維は便のかさを増やし、便通をよくしてくれます。野菜のなかでも根菜類、納豆をはじめとする豆類もおすすめです。熱過ぎるもの・冷た過ぎるものは、どちらも消化器官に負担をかけるので、便秘でも下痢でも摂らないようにしでください。

腸内細菌の数をみるには排便量を見る

腸内細菌の数は排便の大きさでわかる

腸内細菌が元気だと排便量もたくさん

ここまで腸内細菌がどれほど大切な働きをしているかをご理解いただけたと思います。ところで、その腸内細菌の量や、腸内環境の良し悪しを知るための大きな指標となるのが日々の排泄物です。

便は、摂取した食物の残骸だけでできているのではありません。もちろん、食物のカスも排出されますが、便のだいたい半分は腸内細菌です。死んでいる腸内細菌はもちろん排出されますが、生きたものも毎回、必ず排出されています。

生きた細菌も含めてある程度の数が排出され続けながら、腸内はちょうどいいバランスを維持しているのです。つまり、便の大きさから、だいたいの腸内細菌の数がわかるというわけなのです。ちなみに、健康な人間の腸内には総量およそ150 グラムの腸内細菌がいます。

便のサイズタウンは由々しき問題

最近は便のサイズが小さい人が増えているのですが、じつはこれは困ったことです。それはすなわち腸内細菌の数が減り、健康な腸を維持できていないという証なのです。

戦前の日本人は、1日約350 グラムほどの便を排出していました。これは欧米人に比べて大きめなのですが、それは昔ながらの日本食が食物繊維の豊富な材料からできているためでした。

食物繊維は腸の働きを助け、腸内環境をよくしてくれるのです。ところが最近の日本人の食生活はすっかり欧米化し、食物繊維摂聖旦はずいぶん減ってしまいました。

逆に、食品添加物がたっぷり入ったファストフードを好んで食べるようになってしまった結果、排便は150 グラムほどになってしまい、女性の場合はなんと100 グラムまで減ってしまいました。それはつまり、腸内環境が悪化していることを示しているのです。腸内環境の改善のためにも、もう1度、和食のよさを見直したいものです。
最近の日本人の腸の傾向とさまざまな症状

気分や人格形成

腸内細菌叢は気分、人格形成に影響する

現代食と腸内環境

食物アレルギーや肥満、炎症性腸疾患などといった典型的な「現代病」が広がっていますが、こうした症状の原因は、食生活や衛生環境の影響による腸内細菌叢の変化と関連していると考えられます。

アフリカ原住民の子どもと、イタリアで都市生活をしている子どもの腸内細菌叢を比較した研究があります。高食物繊維・低カロリー食で成長したアフリカ原住民の子どもの腸内細菌叢では、日和見菌とされている「バクテロイデーテス門」に属する細菌が優勢だったのに対し、低食物繊維・高カロリー食で育ったイタリアの子どもでは悪玉菌とされている「フィルミクテス門」に属する細菌が優勢でした。

そして、アフリカ原住民の子どもの腸内細菌は、食物繊維から短鎖脂肪酸を合成できる能力の優れた細菌種でした。これらの細菌種によって作り出される短鎖脂肪酸には腸の炎症を抑える作用があり、それがアフリカ人に炎症性腸炎がほとんど見られない原因だと推測されます。

さらにアフリカ原住民の子どもの腸内細菌叢は、イタリア人で都市型生活をしている子どもとくらべて多様な細菌種から構成されていました。こうした多種類で数も多い腸内細菌によって、免疫機能は強化され、ガンにもなりにくく、アレルギー反応も起こらない体になるのです。

腸内細菌は子ともの脳にも影響を与える

研究が進むにつれ、腸内細菌が私たちの気分や感情、人格にまで影響を与えていることが明らかにされてきました。人はそれぞれ気分や人格、思考過程が違うものですが、これもまた腸内細菌の影響なのです。

腸内細菌は脳での遺伝子発現にも影響し、記憶と学習に関係する重要な脳領域の発達を左右していることがわかってきたのです。

脳内の伝達物質である「ドーパミン」や「セロトニン」は腸内細菌によっで合成され、その前駆物質が脳に送られていることを私たちは数年前に報告しました。

それを裏づける研究報告がアイルランドのコーク大学J・F・クリアン博士らによって発表されました。クリアン博士らは、幼少期のマウスが腸内細菌を持たなかった場合、成長彼のセロトニン量がどのように変化するのかを調べたのです。

その結果、腸内細菌を持たないマウスは中枢神経系の多くの部分でセロトニン量が少なくなっていました。とくに雄のマウスではその傾向が顕著にみられました。腸内細菌のない幼少期のマウスに腸内細菌を移入すると脳内のセロトニン量は増えましたが、腸内細菌のない大人のマウスに腸内細菌を移入してもセロトニン量は変わらなかったということです。

こうしたことからも、腸内細菌が脳の発達に重要な役割を果たしていることは明らかでぁり、特に子どもの発達期における腸内環境の改善はとても重要なことだということがわかるのです。

人の腸内細菌の進化

人の腸内細菌は人類の進化とともに生きてきた

人間の腸内細菌はマウスでは機能しない

これまでは、哺乳類の消化管の細菌にとっては種の違いは重要ではなく、マウスでも人間でも同様に棲み着き、同様に働いていると考えられてきました。

しかし、そうではないことが最新の研究によって明らかにされました。研究報告をしたのは、ハーバード大学のD・カスパー教授らです。カスバ一教授たちは、無菌マウスを3グループ用意して、1つ目のグループには、自然のマウスに棲み着いている腸内細菌を植え込み、2つ目のグループには、人間が持っている腸内細菌を植え込み、3つ目のグループにはラットの腸内細菌を植え込んだのです。

結果は、すべでのグループともに腸内で細菌が繁殖し、増えた細菌数は同じになりました。しかし、3グループの腸管組織や腸管リンパ節を詳しく調べてみると、人間の細菌が増殖したマウスと、ラットの細菌が増殖したマウスの腸管には、無菌マウスと同様にほんの少しの免疫細胞しか見られませんでした。これに対しで、マウスの腸内細菌を植え込んだ一つ目のマウスのグループのみ、しっかりとした免疫細胞が確認されたのです。

人間のための腸内細菌だけが免疫機能を発揮する

この結果からわかることは、腸内細菌はほ乳類の種に合わせて共に進化し、宿主のためだけに免疫機能を強化しているということです。

人類の進化にともなって、人間とともに進化してきた腸内細菌は人間のためだけに働くものなのです。人間には人間のための腸内細菌があり、マウスにはマウスのための腸内細菌があるため、これらを入れ替えても腸内細菌はきちんと機能してくれません。そしで、それらの腸内細菌が失われると免疫機能が損われてしまうのです。

日和見菌が若さを保つ

日和見菌を味方にすれば若さを保てる

母と子の腸内細菌は似ている

最近、「母親のビフィズス菌が子どもに受け継がれる」という報告がヤクルト研究所より発表されました。子どものビフィズス菌の遺伝子分布が、母親の持つビフィズス菌のものと一致していることがわかったのです。

さらに、腸内細菌の組成を決めているのは、生まれた直後に接触した人が持っていた菌であるという研究報告が発表されています。

人間の腸内細菌はたいてい母親の腸内細菌と類似し、父親の腸内細菌と似ているという子どもはほとんどいないのです。このように、人間の腸内細菌は乳児期に決まり、その組成は一生変わりません。ここで大きな疑問が出てきます。腸内細菌の組成は一生変わらないのに、なぜ善玉菌が増えると体調がよくて、悪玉菌が増えると体調が悪くなるのでしょうか?

理由はほんの少しのバランスの乱れ

このことを解くカギは腸内細菌の大部分を占める「ファーミキューテス門」の細菌、「バクテロイデーテス門」や「プロテオバクテリア門」の細菌類が握っています。

善玉菌が少し増えると、これらの菌が善玉菌に協力し、逆に悪玉菌が増えると、これらの菌が悪玉菌に協力する。つまり腸内細菌の大部分を占めるこれらの菌は「日和見菌」ではないかと考えられます。

腸内細菌の組成は子どものときにすでに決まっていて、そのまま一生を通して変化しないのですが、問題は腸内細菌の数と、腸内細菌間のほんの少しのバランスの乱れなのです。少しだけ悪玉菌が増えてしまうと、日和見菌はいっせいに悪玉の味方をして腸内環境を一気に悪化させでしまうというわけです。免疫機能が十分働き、人が元気で若く生きるためには、腸内細菌の数とバランスが必要です。