母乳 アレルギー の発症を抑える効果がある

母乳 アレルギー

母乳 アレルギー の発症を抑える効果があります。しかし、この情報は、現在の科学的知見や日本のガイドラインに基づくと、「母乳がアレルギーの発症を『劇的に』抑制する」という明確なエビデンスは、一般的な認識とは少し異なる場合があるという点も踏まえて情報を読み取る必要がありそうです。

母乳 アレルギー との関係性 動物の赤ちゃんは母親の便をなめる

コアラの赤ちゃんは、生まれるとすぐ土をなめたり、お母さんの便をなめたりします。これは、土のなかやお母さんの便のなかにある細菌類をお腹に入れないと、コアラの餌であるユーカリという毒のある葉を無毒化できないからです。

コアラの赤ちゃんは、生まれながらにしてユーカリの葉を無毒化する酵素を持っているわけではありません。だから本能的に、土をなめたりお母さんの便をなめで、自分の腸内細菌を増やそうとするのです。

パンダの赤ちゃんも同じです。パンダの体には餌の堅い笹の葉を消化する酵素がないために、生まれるとすぐに土をなめたり、お母さんの便をなめて細菌をお腹に入れます。腸内細菌が笹の歯を消化してくれるからです。

また、ウサギは下痢をすると、元気なときの自分の便を食べます。この行為には「腸を元気に保ってくれている細菌を膿のなかに取り入れて、腸内環境を整える」という目的があったのです。つまり、元気な動物の便に含まれる腸内細菌は、ある意味で「腸内環境を整える薬」と考えることができます。

人間も同じです。でも、誤解しないでください。「便をなめなさい」と言っているのではありません。「自分の便を汚いからと無視しないで、毎日ちゃんと見てください」、「腸内細菌には重要皇息味があるのだから、むやみに悪者扱いしないでください」ということです。

無菌で育てられた赤ちゃんは弱くなる?

お母さんのお腹のなかにいる赤ちゃんは無菌状態にあります。栄養はへその緒を通して、血液から吸収しています。

そして、この世に生まれ出た瞬間に、大腸菌をはじめとする細菌が一度に入ってきます。生まれてくるときに通る産道や、お母さんの肛門付近にいる細菌たちと触れ合うことにより、いつの間にかたくさんの腸内細菌が赤ちゃんのお腹に棲みつくようになるのです。

これは自然の摂理で、いわば腸から栄養を吸収するための準備のようなものなのです。腸内細菌は、赤ちゃんが口にしたものを分解・合成して、栄葺につくりかえてくれるからです。

以前、アトピーが治らない赤ちゃんの便を調べたことがありましたが、その結果、40%の赤ちゃんの便から大腸菌がまったく検出きれませんでした。まるで生まれてすぐ無菌室に入れられ、無菌の栄養を与えられたような状態で育てたのでしょう。

そんなことからも、大腸菌をはじめとする腸内細菌にはアレルギーを抑える働きがあると推察されます。

さて、そんな生まれたばかりの赤ちゃんに必要なのは、お母さんのおっぱいです。母乳には赤ちゃんの免疫機能を高める効果があることはよく知られています。

では、母乳のどんな成分が、赤ちゃんにとっていい働きをするか紹介します。

  • オリゴ糖ビフィズス菌の餌となって腸内のビフィズス菌を増殖させます。
  • ラクトペルオキシダーゼ腸のなかに入ると抗菌作用を発揮します。
  • リゾチーム細菌の細胞壁を溶解させます。
  • ラクトフェリン鉄と結合することにより、腸内有害菌の増殖を抑制します。
  • 補体成分白血球などによる会食(異物を捕食する)作用を促進します。
  • 分泌型IgA腸管や気道における細菌・ウィルスの感染を防御します。

このように母乳のなかには体を防御するすばらしい物質が入っているのです。とくに生後3週間くらいまでの初乳には、腸内有害菌の増殖を抑制したり、腸管を成長させるなど、理想的な免疫システムを構築する作用があるのです。

母乳 アレルギー の発症抑制に関する まとめ

妊娠中や授乳中の母親の食物除去は、アレルギー発症予防には推奨されておらず、むしろ有害な栄養障害を引き起こす可能性があるとされています。また、完全母乳栄養がアレルギー疾患予防において混合栄養に比べて優れているという十分なエビデンスもない、というのが現在の主流な見解です。

ただし、母乳には赤ちゃんの免疫機能の発達を助けたり、腸内環境を整えたりするなど、多くの有益な効果があることは広く認められています。これらの効果が結果的にアレルギーの発症リスクを低減する可能性は否定できませんし、一部の研究では特定の条件下での予防効果も報告されています。

赤ちゃんの健やかな成長のために:母乳とアレルギー発症の最新情報

赤ちゃんの健やかな成長は、すべての親の願いです。特に近年、アレルギー疾患の増加が社会的な課題となる中、「母乳がアレルギーの発症を抑える」という情報に注目する方は少なくありません。しかし、現在の医学的知見に基づいた正確な情報が求められています。このページでは、母乳とアレルギー発症の関係について、最新の科学的エビデンスや日本のガイドラインに基づき、その役割と注意点を包括的に解説します。

母乳が赤ちゃんにもたらす多角的なメリット

母乳には、赤ちゃんの発育に必要な栄養素がバランス良く含まれているだけでなく、免疫機能の発達をサポートする様々な成分が含まれています。

  • 免疫成分の提供: 免疫グロブリン(IgAなど)、ラクトフェリン、リゾチームといった免疫物質が豊富に含まれており、赤ちゃんを感染症から守る働きがある。
  • 腸内環境の形成: 母乳に含まれるオリゴ糖は、ビフィズス菌などの善玉菌の増殖を促し、赤ちゃんの腸内環境を健康に保つ上で重要な役割を果たす。健康な腸は、アレルギー発症の抑制にも関与すると考えられている。
  • 消化吸収の促進: 赤ちゃんにとって消化しやすく、栄養素が効率的に吸収されるように設計されている。

これらの総合的な働きにより、赤ちゃんの健康な身体づくりを支え、結果的にアレルギーを含む様々な疾患リスクの低減に寄与する可能性が考えられます。

アレルギー発症予防における母乳の役割:最新の知見とガイドライン

かつては「母乳のみで育てることや、授乳中の母親が特定の食物を避けることがアレルギー予防になる」と考えられていた時代もありました。しかし、近年では多くの研究が進み、その見解は大きく変わっています。

  • 母親の食事制限は推奨されない: 日本の「食物アレルギー診療ガイドライン」や厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、妊娠中や授乳中の母親がアレルギー発症予防のために特定の食物(卵、牛乳、小麦など)を避けることは推奨されていません。これは、母親自身の栄養障害を引き起こすリスクがあり、かつアレルギー発症予防効果が明確に示されていないためです。バランスの取れた食事が最も重要です。
  • 完全母乳栄養とアレルギー予防: 母乳には多くの有益性があるものの、食物アレルギー予防という点で完全母乳栄養が混合栄養に比べて「優れている」という十分なエビデンスは現在のところ確立されていません。
  • 牛乳アレルギーに対する新たな視点: 一部の研究では、高リスク乳児(両親や兄弟にアレルギー患者がいる場合)において、早期に少量ずつ牛乳タンパク質(普通ミルク)を摂取することで、牛乳アレルギーの発症を予防する効果が報告されるなど、新たな知見も出てきています。ただし、これについてはまだ十分なエビデンスの蓄積と専門医の指導が不可欠です。

アレルギー発症予防のために今できること

母乳そのものが「アレルギーを抑制する特効薬」ではないという認識を持ちつつも、母乳育児が赤ちゃんの健康に多大なメリットをもたらすことは揺るぎない事実です。アレルギー発症予防においては、母乳育児に加えて以下の点が重要視されています。

  • 乳児期早期からのスキンケア(保湿): 生まれたばかりの赤ちゃんの皮膚はバリア機能が未熟であり、アレルゲンが皮膚から侵入することでアレルギーが感作される(アレルギー反応が起きやすい状態になる)と考えられています。乳児期早期から継続的な保湿ケアを行い、皮膚のバリア機能を良好に保つことが、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症予防に非常に効果的であるとされています。
  • 適切な時期の離乳食開始: 食物アレルギーの発症を心配して離乳食の開始を遅らせることは推奨されません。生後5~6か月頃を目安に、適切な方法で離乳食を開始することが重要です。特定の食物の導入を極端に遅らせることは、むしろアレルギー発症リスクを高める可能性も指摘されています。
  • 医師との連携: 赤ちゃんに湿疹やアレルギーが疑われる症状が見られる場合は、自己判断せずに小児科医やアレルギー専門医に相談することが最も重要です。適切な診断と指導のもと、個々の子どもに合わせた対応を行うことが、アレルギーの管理と予防につながります。

まとめ:母乳の恵みと科学的根拠に基づいたアレルギー対策

母乳は、赤ちゃんに愛情と栄養、そして様々な保護因子を届けるかけがえのないものです。アレルギーの発症抑制について明確な特効薬ではないとしても、母乳が赤ちゃんの免疫発達や腸内環境の健康に貢献することは間違いありません。

しかし、過度な期待や誤った情報に惑わされることなく、最新の科学的知見に基づいた適切なアレルギー対策を行うことが、赤ちゃんの健やかな成長には不可欠です。乳児期からの徹底したスキンケア、適切な離乳食の進め方、そして専門医との連携を柱に、それぞれの赤ちゃんに合った最善のアプローチを見つけていきましょう。