西洋医学 歴史 自然と共に暮らしてきた日本人にとって西洋医学が正解なのか考えてみましょう。ヨーロッパにおいては、「医」の起源は古代ギリシアのヒポクラテスとされています。 その後古代ローマのガレノスがアリストテレスの哲学(学問の集大成)を踏まえ、それまでの医療知識をまとめ、学問としての医学が確立されたと言われています。 ガレノスはその後、数百年ものあいだ権威とされました。
西洋医学 歴史 虫を排除することがきっかけで発見
近現代の日本では、虫はとても嫌われる存在になってしまいました。これは西洋医学の影響かもしれません。というのも、西欧では虫を病原因子と捉え、「排除すべき物」として扱ってきたからです。
このことは WHO の記章に象徴されています。棒に巻きつく蛇を措いたこのデザインは、「旧約聖書」の記述に由来し、ギリシャ神話ではアポロンの息子で医術の神であるアスクレビオスが掲げていたとされるものです。
ただし、本当はほどではありません。「旧約聖書」の舞台になっているアラブ地方に多い、メジナムシという寄生虫です。これに感染すると、皮膚病変部に強い痛みと痔みが生じます。農作業も何も手につかなくなるなど、非常につらい症状です。
それで古来、皮膚の丘疹から棒を用いてメジナムシを引き出す、という治療が行われていました。その治療行為が西洋医学のシンボルマークにまでなったようです。
西洋医学 反対 東洋医学の考え方
一方、東洋医学は寄生虫をどう捉えていたのでしょうか。病気や、ときには死をもたらす、体に棲む虫に怯えた点では西洋人と同じです。ただ、「病気もヒトと一体」と考える東洋人は、寄生虫をヒトと切り離して扱うことはしませんでした。
体に棲みつく虫も自分自身の一部だ」と捉えたのです。当然、日本も昔は体内の寄生虫を自分の「分身」とし、その虫たちが病気を引き起こしたり、意識や感情を呼び起こしたりすると考えていました。それが証拠に、日本語には「虫」のつく慣用句がたくさんあります。「虫がいい」「虫が納まらない」「虫が好かない」「虫が付く」「虫の知らせ」「虫の居所が悪い」「虫も殺さぬ」「虫をわずらう」お腹のなかの寄生虫が、日本人を動かしている原動力であると考えていたのでしょう。
こんなふうに虫の存在を認めると、生き方が楽になります。「自分は気づかなかったけど、虫が教えてくれるんだ(虫の知らせ)」「私はあなたを好きだけど、虫が嫌っているんだ(虫が好かない)」「私は納得しているけど、虫が反発するんだ(虫の居所が悪い)」と、「見えない力」を味方につけることができます。「浮気の虫」というのもあります。
日本人の半数以上が虫持ち 寄生虫
日本人は縄文の昔からずっと、「虫持ち」でした。回虫やギョウ虫をはじめとする寄生虫を「飼って」いたのです。
しかし、現在は回虫にかかっている人はほとんどいません。19500年代に60%を超えていた日本人の寄生虫感染率は、30年でほとんどゼロになっているのです。
人間は縄文時代から寄生虫と共生してきたなかで、それなりに彼らとうまくつき合って健康を維持するようになっていたことが考えられるからです。
寄生虫のイメージの多くは寄生虫の恐ろしさや危険性ばかりです。寄生虫の中には、脳に寄生するものが数多くあり、有鉤嚢虫(ゆうこうのうちゅう)はその1つです。有鉤嚢虫は、有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)(サナダムシの一種)の幼虫で、ブタに寄生しています。
人がそのようなブタの肉を十分加熱せずに食べた場合、腸の中で成虫(有鉤条虫)となり、糞便とともに虫卵を体外に排出することになります。この虫卵に汚染された水や食品を摂取することにより、ブタだけでなく人も感染し、体内で有鉤嚢虫になります。有鉤嚢虫は体の様々な場所に寄生しますが、脳に寄生することもあります。多数の虫卵を摂取することにより、脳が虫だらけになっていることがあります。
有鉤嚢虫が脳に寄生すると、体が痙攣したり、意識を失ったり、失明したり、場合によっては死亡することがあります。有鉤嚢虫症は、他の人の大便が原因となる以外にも、自分の体内に寄生している有鉤条虫からうつってしまうこともあります。
エキノコックス症は、主に肝臓に寄生するエキノコックスという寄生虫の幼虫に寄生されることによっておこる病気です。主にキツネやイヌなどの糞に虫卵が含まれており、この虫卵で汚染された食品や水を摂取することによりエキノコックスに寄生されます。
寄生された後、数年(1~30年)はなにも自覚症状はないのですが、その間にエキノコックスは、少しずつ肝臓などの臓器を食べ続けており、自覚症状が現れたときには、肝臓は寄生虫に食い荒らされて蜂の巣のようになっています。残った部分も肝硬変を起こして正常な部分がほとんど残っていません。さらに、肝臓から漏れ出た寄生虫が脳、その他の臓器や骨髄などに寄生し、死亡します。
バンクロフト糸状虫は、蚊にさされることによってうつる寄生虫です。症状が全くないことも少なくないのですが、重症化することもあります。この寄生虫はリンパ管、腕や足などに寄生しますが、陰嚢や陰茎に寄生することもあります。
陰嚢に寄生すると陰嚢が巨大化し、重症の場合には陰嚢が大きくなりすぎて歩くのが困難になります。江戸時代に陰嚢が巨大化した芸人が複数存在したことが文献(「想山著聞奇集」「東海道中膝栗毛」「北斎漫画」)に記載されています(大きいもので五斗=90リットルくらいあったようです)が、これらの芸人はバンクロフト糸状虫に感染したものだろうと言われています。
寄生虫の多くほ人間の体内で栄養を横取りするけれど、宿主である人間の体内の栄養奪うほどの致命的な害はおよぼしません。人間の死は寄生虫自身の死をも意味するからです。